第20話

相棒組 腐れ縁
428
2020/10/17 01:42
「もし大切な人がどこかに消えたらどうする?」

「何言ってんるんや」

からからと彼の少し高めな声が部屋に響く。

「大切な人がどこかに行ったらお前はどうするんや?」

「そんなの認めてあげるだけやろ」

服と畳が擦れる音がかすかにする。

「どういうことや」

「だって僕の大切な人はいつも僕を嫌いになるんやもん」

彼は淡く笑ってテーブルの上に出された炭酸飲料を喉に流し込む。

「そんなことあらへんよ」

「なんでそんなことがわかるん?」

少し苦笑いを浮かべて彼は問う。

「俺は大切じゃない?」

自分にしては少し踏み込みすぎたとか微かな思う。

「大切じゃないで」

彼はまたあの喉がひりつくような炭酸を飲み込んでから答える。

「全く大切やない」

ふっと笑ってこちらを見る。

「だから俺を嫌いにならんといて」

まどろっこしいことは嫌いなんだよ。
そう思いながら少しだけ笑いながら答える。

「当たり前やろ。俺もお前が大切やないから絶対どこにも行かんよ」

今でもその泣きそうな安心したような顔は脳裏に焼き付いている。

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