第12話

マネージャーの弟
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2022/03/06 15:00
(hokuto side)

弟?

そんな気配、一度もなかった。

しかも、この様子を見ると、長く入院してる感じ。


蘭「皆さん、私に弟なんてって顔してますね。顔も似てませんもんね。笑」

ふぅと息を吐くと、

蘭「湊は、腹違いの弟です。」

そう感情のない声で言った。

起き上がろうと、体を起こそうとするが

蘭「うっ!!」


湊「蘭姉、それ以上は…」




これ以上無理をさせられない俺らは、湊くんとともに病室を出た。


湊くんは、神妙な面持ちで、

湊「あの、姉さん、自分のことどこまで話しましたか?」

そう俺たちに問いた。

大「それ、どういう意味?」

湊「やっぱり…、…何も話してないんですね。そしたら、僕からは何も言えません。ただ、一つだけ。蘭姉は、どこかで誰かが止めてあげないと限界に気づかずに倒れてしまう性質なんです。なので、マネージャーの弟の分際でとは思うのですが、その、リミッターになってくれませんか?僕も、多分、ずっとはそばにいられないので」

その弟の言葉が終わるとともに

カチャーーん

数メートル先からなにかが落ちる音がした。

振り返るとそこには、

顔を青白くした、あいつがいた。

湊くんは、しまったという顔をしていたが、その場から逃げることなく、

あいつが、足をひきづりながらこちらへ向かってくるのを待っていた。


あぁ、弟は、先が長くないことを告げていなかったのか。
そう、一瞬で察した。


蘭「湊、なんで、、そんな大事なこと、私に言ってくれなかったの?ずっとそばにいられないって、どういうこと?」

湊「そのままの意味だよ。俺は、長くは生きられない。」

蘭「長くって、どのくらい??」

湊はその言葉に、1と指でだして、

湊「1年。」

そういった。

蘭「そんな……っ、。」

崩れ落ちたマネージャーは、京本に支えられながら、体を、震わせていた。

湊「だから、最後まで、俺の大好きな蘭姉の笑顔と仕事頑張ってる姿たくさん見せて。そして、あの約束も。」

蘭「わかった。絶対、約束果たすから、だからそれまでは……。」

湊くんは、首を縦に振り、自分の病室まで戻っていった。




それから、すぐのことだった。

そいつが、病室からも、俺らの前からも姿を消したのは………。





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