広報委員になった私は、毎週金曜日の放課後、当番活動だった。
HRが終わるとすぐに放送室に向かう。
急いで行って、放送流さなきゃ!
私は走って放送室に行った。
もう、何回目かの当番活動。
でも、ドキドキするのは変わらない。
やばい。なんで、こんなに緊張するんだろ。
放送自体はそこまで緊張しないんだよね。
やっぱり、先輩だよね。
今日は先輩より早いみたい。
放送器具を準備した。
多分、私の緊張は、先輩と2人だからだと思うんだけど。
そんなことされたら、ほんとに好きになるかもしれないよ…!
~放送中~
えっ?
ほんとに先輩、手、握ってくれてるよぉ。
ドキドキ…
はぁ、どうしよう。
余計緊張するよ。
なんとか、放送を終えた。
あーもう、やめてほしい。
好きになったら困るんだって…
ひなた先輩が笑顔を消して聞いたから、何を聞かれるのか、心配になった。
先輩は少しためらって言った。
なんて答えればいいの?
男子だと思って話しちゃってる気がするけど、失礼じゃないかな?
え?なんで?
なんでありがとうなの?
何がなんだかよく分からない。
先輩は涙を流しながら、でも、力強く話してくれた。
正直、びっくりした。
けど、先輩から男子っぽいオーラを感じたのはきっと、先輩の心の中が男子だからだったんだ。
えっ……
キス…だ…
どうしよう…
もう、これじゃ私…
好きから逃げられなくなっちゃう。
ひなた先輩が性同一性障害だって、私の気持ちは変わらない。
そのままのひなた先輩が好きだから。
こうして私たちは付き合い始めた。
できるだけ、人に見られないように会って、お互いに話したいことを話して笑い合う。
ただそれだけの時間が楽しくて、ずっと続けばいいって願ってた。
けど、気づいたら先輩の卒業が近づいていた─
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。