第6話

当番活動
52
2018/03/04 13:56
広報委員になった私は、毎週金曜日の放課後、当番活動だった。

HRが終わるとすぐに放送室に向かう。

急いで行って、放送流さなきゃ!

私は走って放送室に行った。

もう、何回目かの当番活動。
でも、ドキドキするのは変わらない。

やばい。なんで、こんなに緊張するんだろ。

放送自体はそこまで緊張しないんだよね。
やっぱり、先輩だよね。
今日は先輩より早いみたい。

放送器具を準備した。
ひなた
ごめん。
遅くなった。
さくら
あ、先輩。
大丈夫ですよ!
ひなた
さくらちゃん、緊張してる?
さくら
あ、まぁ、少し!
ひなた
少しって感じじゃないけど。笑
さくら
え…
多分、私の緊張は、先輩と2人だからだと思うんだけど。
ひなた
もう何回かやってるのに。笑
さくら
そ、そうですよね。笑
ひなた
大丈夫!
手、握っててやるよ!笑
さくら
えー!
いいですいいです!!
そんなことされたら、ほんとに好きになるかもしれないよ…!
ひなた
いーの!
もう時間だよ?
さくら
あ、ほんとだ!!
じゃあ、かけますよ。
~放送中~

えっ?
ほんとに先輩、手、握ってくれてるよぉ。

ドキドキ…

はぁ、どうしよう。
余計緊張するよ。
さくら
HRが終わって15分が経過しました。
部活動がない生徒は、速やかに下校してください。
なんとか、放送を終えた。
ひなた
お疲れ。
俺のおかげでちゃんとできたね。笑
さくら
バカにしないでくださいよ!笑
ひなた
あれ?
ありがとうは?笑
さくら
もー、ありがとうございます…
ひなた
ははっ、面白い。笑
あーもう、やめてほしい。

好きになったら困るんだって…
ひなた
あのさ、
さくら
なんですか?
ひなた
変な事聞いてもいい?
ひなた先輩が笑顔を消して聞いたから、何を聞かれるのか、心配になった。
さくら
…いいですけど…なんですか?
先輩は少しためらって言った。
ひなた
さくらちゃんは、俺と話すとき、女子だと思って話してる?
男子だと思って話してる?
あ、ここ女子校だし、普通、女子だと思うよな。笑
さくら
え?
なんて答えればいいの?
男子だと思って話しちゃってる気がするけど、失礼じゃないかな?
ひなた
いいよ。
正直に言ってほしい。
さくら
え、えっと…
さくら
私は…
ひなた
うん、
さくら
男子と話してる気分になります。
ひなた先輩と話してると…
ひなた
そっか。
さくら
え、あっ、すみません!!
ひなた
ううん。
ありがとう。
え?なんで?
なんでありがとうなの?

何がなんだかよく分からない。
さくら
あの、どういうことですか?
ひなた
こんな話するの、実はさくらちゃんが初めてなんだ。
驚かないで聞いてほしい。
さくら
わ、分かりました!
ひなた
俺…性同一性障害なんだ。
身体は女性なんだけど、心は男性。
見た目は女子かもしれないけど、本来の俺は、男子だと思ってる。
こんなこと言ったら、引かれるって分かってる。
でも、さくらちゃんなら、受け止めてくれると思った。
先輩は涙を流しながら、でも、力強く話してくれた。

正直、びっくりした。

けど、先輩から男子っぽいオーラを感じたのはきっと、先輩の心の中が男子だからだったんだ。
さくら
私は、先輩のこと、なぜだか分かんないけど、男子と同じように考えてました。
女子校だし、女子だって自分に言い聞かせてたんですけど、どうしても、男子としか思えなくて。
話してるとドキドキするし…
女子にこんな感情持っちゃったらダメだって、自分に言い聞かせて…
あ、私何言っちゃってるんですかね。
でも、先輩のことずっと考えちゃっ──
えっ……






キス…だ…
どうしよう…
もう、これじゃ私…

好きから逃げられなくなっちゃう。
ひなた
ありがと。
俺、さくらが好きだ。
こんな俺を受け止めてくれて、ありがとう。
さくら
ひなた先輩…
ひなた
俺のこと、男子だって思って接してくれたの、さくらが初めてなんだ。
さくら
初めてが私で良かったです!
そうじゃなかったら、他の人にとられてたかも!!
ひなた
そーかもね。笑
ひなた先輩が性同一性障害だって、私の気持ちは変わらない。

そのままのひなた先輩が好きだから。
ひなた
実は、さくらと最初にすれ違ったときから、思ってたんだ。
こいつ、俺のこと男子だと思ってるって。
さくら
えー!
そうだったんですか??
ひなた
分かりやすいもん。笑
さくら
そうですか…笑
こうして私たちは付き合い始めた。

できるだけ、人に見られないように会って、お互いに話したいことを話して笑い合う。
ただそれだけの時間が楽しくて、ずっと続けばいいって願ってた。

けど、気づいたら先輩の卒業が近づいていた─

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