第3話

弐/朝日 炭side|噂話 ?side
【弐/朝日 炭side】
急ぎに急いで朝食を済ませ、戸締まりを確認した後、半ば転がるように家を飛び出した。急がないと、善逸の風紀委員の仕事に支障が出てしまう。『待ってよぉ~ったぁんじろぉお″っ!』と、涙目になりながら走っている善逸を急かしつつ、校門まで全速力で走り抜ける。ここから学校まで数分。毎朝恒例とも言えるであろう光景だ。そんな俺たちがご近所で『朝からランニングをする若い子』と評判なのは、恥ずかしいので、善逸には内緒のお話ということにしている。
「おはようございます!!冨岡先生!」
我が校の熱血体育教師、冨岡義勇先生に言葉を投げかける。怖いと評判な先生だが、全然そうだとは思わない。むしろ、一番に生徒を思っている優しい先生だと思う。
「お、おはようございます……」
俺の後に善逸が何故かびくびくしながら挨拶をすると、冨岡先生が顔をしかめ、こちらに寄ってきた。
「……竈門、我妻。間に合うように仲良く早めに登校するのはいいことだが、お前たちはいつになったら校則にそった身なりになるんだ。」
腕を組みながら問いかける先生に対し俺たちは、
「すみません!!ピアスは外せません!!!」
「地毛だってば……」
と、それぞれ反論をする。さらに顔をしかめる冨岡先生をよそに、『失礼します!!』と頭を下げ、善逸の手を引きつつその場から退散する。これも、毎朝恒例と言っても過言ではないやりとりだ。後ろで、冨岡先生のため息のようなものが聞こえた気がした。
そのまま玄関に入り、近くの時計を見ると、現在は午前7時30分。どうやら間に合ったようだ。
ここで、善逸は風紀委員の仕事、俺は禰豆子に用意があったため、とりあえず善逸とは生徒玄関でわかれた。朝日に照らされている廊下を進みながら、カバンを漁りつつ、中からある「新レシピ」と記載されている資料を取り出す。そう、これは実家のパン屋でいつか並べられるであろう新作パンのレシピだ。母から依頼され、ここ一週間弱で案を絞りに絞った。「(美味しいパンができあがるぞ、)」と内心ほくほくしながら歩を進めていくと、ちょうど入室しようとしていた教室から禰豆子が顔を覗かせた。
「お兄ちゃん」
鈴のような声が、廊下に響く。あぁ、相変わらず可愛らしい。朝日に照らされているからだろうか、いつもよりも綺麗に見える。これが光映え、というやつなのだろうか。
「お兄ちゃん?」
「はっ……ね、禰豆子。おはよう」
いけない、つい見とれてしまっていた。
「おはよう、……どうしたの?ぼーっとしてたけど…。まさかまた……」
若干顔をしかめてこちらを見つめてくる。以前、徹夜を続けていていた結果、授業中に倒れたことがあった。それを禰豆子は気にしているのだろう。
「む、無理はしていないぞ! はい、これ頼まれていたものだ」
「本当かなぁ……。」
疑っている様子なものの、受け取ってくれる禰豆子。困った。…さて、どう弁解しようかと考えていると、外から他生徒たちの声が耳に入った。そろそろみんなが登校してくる時間帯のようだ。
「じゃあ、禰豆子。俺はもう行くよ」
「あっ……うん、ありがとうお兄ちゃん。今日も1日頑張ろうね」
相づち変わりに頭をぽんぽんと撫で、その場から立ち去った。
「た、助かった……」
ほぅ……と一息つき、胸を撫でおろす。さて、禰豆子にも言われたとおり、今日も1日頑張ろう。自然と足取りが軽くなるのを感じつつ、自分の教室へと歩を進めた。
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【噂話 ???side】
『_ねぇ、知ってる?』
『なにを?』
『″神様″の話よ、察しが悪いなぁ……』
『″かみさま″?……あぁ、夜に出る鬼をやっつけるってやつ?迷信だってー』
『いいやっ、″かみさま″はいるのよ!!うちの学校の生徒が助けられたことがあるって、胡蝶先輩から聞いたんだからっ』
『そ、……そうなんだ…。胡蝶先輩が言うならそうなのかも……。ところで、″かみさま″っていろんな種類?があるんでしょ。それってなんなの?』
『えーっと確か……有名なのは、″猪神様(いのかみさま)″、″雷神(なりかみさま)″……あとは、』

「……″日神様(ひのかみさま)″。」
彼女たちは知らないであろう。今世、その座は空席だ。ぽつりと呟いた神の名は、やけに胸を締め付けた。
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投稿主
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こんにちは( ^ω^ )
投稿主
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前回、今回と続けて日常……ほんわかパートとなっております。一応、次回から進展させていく予定ですのでお楽しみに……