第4話

参/雨音 炭治郎side
「あっ、……雨降ってるね」
隣に座っている善逸が、昼食であるパンをかじりながらぽつりと口にする。
「あぁ、そうだな。確か、昨日の天気予報では曇りだったんだが……。」
「あ″?朝俺が見たやつじゃ雨だったぞ。目ついてんのか?」
俺の言葉に珍しく反応した伊之助が、どや顔を向けてくる。やっぱり、もう少し余裕をもって起きるべきだったな……。
「伊之助って天気予報見るんだ…」
「見るわ!!!!バカにすんな!!」
驚いたように目を丸くする善逸に掴みかかる伊之助。見慣れた光景なものの……どうしてこう、毎回喧嘩に発展するのだろうか。
「こら伊之助、善逸を離すんだ。苦しそうだろう。」
これをやるから、離してやってくれ。と、自身の弁当に入っていた天ぷらを差し出す。好物にぴくりと反応した伊之助は、
『チッ……紋次郎に感謝するんだな。』と善逸に吐き捨てるように言って離し、差し出した天ぷらを口に運んだ。もきゅもきゅと頬張るように食べる伊之助は、まるでハムスターのようだ。
「躾されてる……」
「しつけ?」
「されてねぇ!!!!」
うぅ、これではまた喧嘩を始めてしまうな……なんとなく察した俺は、話題を変えてみることにした。
「そういえば2人とも。放課後空いてないか?新作のパンの試食をしてほしいんだが……」
「うっ…食べたい……けど、ごめん炭治郎。じいちゃんから頼みごと頼まれちゃって…」
「俺はババアと出掛ける」
「そうか……、」
残念だが、用事があるなら仕方がない。自分のために早く終わらせろ、なんて言えないし言いたくないからな。
「じゃあ、次の機会にしよう。3人揃ったときがいいな」
にこっ、と2人に微笑みを向ける。気持ち悪いだなんて思われただろうか……。押し黙っている2人に恐る恐る目を向けると、なんてことはない。伊之助はホワホワと白い頬を少し赤らめており、善逸は何やらふやけた顔をしていた。
「(あ、嬉しそうだな……。よかった)」
一目でわかるくらい、彼らは嬉しそうだった。なんだかこちらが恥ずかしくなってきたので、また話題を切り替えた。

放課後。普段ならば星で綺麗に染まるはずの空は濃い雨雲で覆い隠され、街灯の明かりが目立つほど、すっかり暗くなっていた。
実家の手伝いを終えた俺は一人、帰路についている。現在の時刻は21時。『もうすぐ帰る』と善逸から連絡があり、やや早足気味に我が家へと足を進めていた。先程まであまり気にならなかった傘に当たる雨音が、俺を急かしているように強くなってきているように感じられる。
「随分降るな…。」
生憎、雨は少し苦手だ。湿気はあるし、衣類が濡れてしまうし、何よりもじめじめとした匂いがあまり好きではない。
ぽつりと呟いた一言が、アスファルトに打ちつけられる雨によってかき消される。背後から近付いてくる不気味な足音と共に、消えてゆく。