第20話

気付いてしまった"好き"
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2021/04/22 04:00
思い返せば、いつも唯月くんがいた。

自信のない放課後も。

赤点ギリギリのテスト前も。

失恋した雨の日も。

どんなにネガティブで、自分に自信のない私でも諦めないでいてくれた。

いつも不器用な言葉で、時には励まして、時には叱ってくれた。

どんなときも、優しさを与え続けてくれた。

松田 結々花
松田 結々花
……どうしよ
───気付いてしまった。
松田 結々花
松田 結々花
唯月くんが、好き
"好き"のドアを開けた瞬間、ブワッと気持ちが溢れ出して止まらない。

ど、どうしよう。
……志賀先輩の時とは比べ物にならないドキドキに、胸が苦しくなっていく。
松田 結々花
松田 結々花
……あ!今日、
メイク講座の日だ……
松田 結々花
松田 結々花
……無理、無理無理!
松田 結々花
松田 結々花
どんな顔して会おう?
っていうか、メイクなんて
されたら恥ずかしすぎて……
登校前。
自分の部屋を端から端まで行ったり来たり。

ブツブツと独り言を零しながら、火照った頬を両手で包み込む。

……こうなったら、仕方ない。
あの人に頼むしかないよね。
***

【昼休み】
中条 光
中条 光
それで?
俺に相談したいことって?
ニコニコと笑う光くんからは、ワクワクという効果音が出ている。
松田 結々花
松田 結々花
あの……実は、
すうっと息を吐いて、気持ちを落ち着かせようと試みるけれど、心臓はドキドキと音を立てるばかりで、一向に鎮まってくれない。
松田 結々花
松田 結々花
……っ、やっぱ言えない!
松田 結々花
松田 結々花
それに、光くんじゃダメ。
……同じ顔で余計ドキドキする
私のバカ!
なんで気付かなかったの……。

目の前には唯月くんと同じ顔。
性格は正反対な二人だけど、顔はよーーく見ないと区別できないくらい似ている。
中条 光
中条 光
ふぅん。
……分かっちゃったかも!
松田 結々花
松田 結々花
───!?
中条 光
中条 光
ゆゆちゃん、唯月に惚れた?
松田 結々花
松田 結々花
───!!!!!
中条 光
中条 光
あ、図星☆
『あ、図星☆』じゃない!!と、言いたい気持ちに蓋をして、私は静かに頷く。
松田 結々花
松田 結々花
そ、その……好きって自覚したら
今日のメイク講座が不安になって
中条 光
中条 光
えー?どうして?
せっかく2人きりなのに!
松田 結々花
松田 結々花
それが困るの〜!
か、顔……恥ずかしくて見れない
中条 光
中条 光
あ〜、なるほどね!
ゆゆちゃん、ウブで可愛いね
サラッと"可愛い"なんて言葉を言ってしまう光くんを彼氏に持つ女の子は、きっと気苦労が耐えないんだろうな。
中条 光
中条 光
……あ!じゃあさ、
俺で練習すれば?
松田 結々花
松田 結々花
れ、練習?
中条 光
中条 光
そ!同じ顔なわけだし、
俺と距離感の練習しよう
松田 結々花
松田 結々花
距離感の練習……
中条 光
中条 光
唯月にメイクされてる間は
どこに意識向けておくかとか。
そしたら、少なからず不自然な
態度にはならないんじゃない?
松田 結々花
松田 結々花
なるほど!
確かに、前もって練習すれば
唯月くんの前でも緊張しないかも
光くんありがとう
光くんの提案に目を輝かせて、両手を合わせる。

そんな私に、「ゆゆちゃんと可愛い弟のためだからね」と余裕のウインクを投げてくる光くん。

だけど、
松田 結々花
松田 結々花
私も、杏と光くんのこと
協力するから……ね!
中条 光
中条 光
……ッ、ゴホッ、
松田 結々花
松田 結々花
ひ、光くん!?
大丈夫!?
中条 光
中条 光
な、なんで……俺が、
杏ちゃんのこと……っ
もしかしたら光くんは、本命の女の子には素直になれない男の子なのかもしれない。

加えて、自分の気持ちにもすごく鈍い。
そう思うと、本当に……恋って不思議だなぁ。

恋をすると普段の自分とはちょっぴり違う、新しい自分が見え隠れする。

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