第7話
コスメティック
唯月くんからのお誘いは素直に有難いし、とても嬉しい。
……いや、でも待てよ?
もし、2人きりで出かけたところを学校の子たちに見られでもしたら、大騒ぎされてしまうんじゃ!?
そ、それはちょっと避けたい。
という私の個人的な懸念から……「せめて、光くんと3人で!」と、提案してしまった。
この2人、本当に似ているのは顔だけで、性格はまーーったく違う。
だけど、お母さんの影響で似た道を目指しちゃうとか、やっぱり似ているところもあって……。
双子って不思議だなぁ。
もしかしたら、好きになる子も似てたりするのかな。
***
やって来たのは近所のドラッグストア。
コスメ売場って、もっと敷居の高い華やかなイメージだったけど、ドラッグストアなら気軽に選べそうでちょっとだけホッとしてる自分がいる。
パァッと顔を輝かせた私は、唯月くんに痛い所をつかれて一瞬でシュンと縮こまる。
そんな私を光くんはおかしそうに笑った。
相変わらず辛口の唯月くんだけど、コスメを選んでくれる瞳は真剣そのもので、楽しそうな横顔を見つめれば、私まで口角が上がってしまう。
唯月くんのコスメやメイクに関する知識豊富な新しい一面を知って、今ちょっぴり嬉しい。
お母さんのことを"ゆりちゃん"って呼んでるなんて、なんとも光くんらしいなぁ。
2人の会話に全然ついていけないまま、キョトンとする私を光くんはニヤリと笑って、唯月くんは興味なさげに再びコスメへと視線を戻してしまった。
「大好きな人に可愛いって言ってもらうのが1番」か。
私にもいつか、分かる日が来るかな……?