───昼休み。
杏とお昼ご飯を食べていた私を、颯爽と連れ去って、人気の少ない空き教室にやって来た光くん。
そして、私をジーッと見つめて首をひねった。
……な、なんだろう。
この、いたたまれない感じは。
上から下まで、余すところなく見透かすような光くんの瞳に、数歩後ずさりすれば、逃がさないよ?と言わんばかりに笑顔でジリジリと迫り来る光くん。
そう言って、私の顎をクイッと持ち上げて、不敵に笑う光くんに思わず息をするのも忘れる。
スカートのウエスト部分を、くるくると捲っていく光くんに、ギョッと目を見開く。
光くんによって、一瞬で短くなったスカート丈に恥ずかしさからモジモジしてしまう。
は、初めて制服のスカートを膝上にしてしまった。
なんて、軽くウインクを決めた光くん。
差し出されたのは、白地に、足首の部分だけ黒のラインが2本入ったショート丈の靴下。
半信半疑のまま、言われた通りショートソックスに足を入れる。
……わっ、
さすが、スタイリスト志望。
地味な私が、こんな短時間でここまでオシャレになるなんて……。すごい!
フッ、と優しく笑って、ジリ、と私に詰め寄る光くん。
気付けば、襟元のリボンは、光くんにクイッと引っ張られて、ゆるゆるに。
おまけに、光くんの長くて細い指が私のワイシャツの第1ボタンを……って、
男子に免疫がない私にとって、女の子慣れしてるであろう光くんの行動は刺激が強すぎる。
変に意識しちゃって恥ずかしいけど……今の私にはこれがいっぱいいっぱいだよ。
───カシャッ。
スマホカメラのシャッター音がして、光くんが画面を私に向けた。
そこには、
ずっと羨ましいと思っていた、キラキラした女の子たちに、また少し近づいた私がいた。
"楽しみだね"なんて、本当に楽しそうに笑う光くんに、気づけば私も大きく頷いていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!