気がつくと朝になっていた。
渡されたのは一万円。
俺は断りたい気持ちでいっぱいだったが、断ったら父さんは激怒するだろう。
男の人はそう言うと俺にキスをし、部屋から出て行った。
俺も部屋を出てお風呂に入った。
その後は部屋を片付けた。
母さんだ。起きてきたのか。
起きてきた父さんは母さんがいないところに俺を呼び出して聞いてきた。
昨日貰ったお金の額を聞いてるんだろう。
父さんはそう言いながら機嫌よく母さんのいる場所に戻っていった。
今日は二人とも機嫌が良い。今日は…食べれるかな。
父さんと母さんは機嫌良く席についた。俺の分も作ってあった。
二人ともご飯を食べながら仲良さそうにしている。
今日は食べていいかな…?
俺がご飯を口に入れると二人は急にこちらを見てきた。
父さんの手が俺の口の奥へ入っていく。
吐きそうだ。
食べたものを吐いてしまった。
こんなことをされるのももう何回目だろうか。
不思議と辛いという気持ちは1つもない。
ベランダか。
俺はそう言ってベランダへ出た。
いつもそうだ。俺が何かをするとすぐベランダに出す。
そして鍵を閉められて家の中へ入れないようにされる。
まあ、俺が悪いのだけれど。
ベランダの下から声が聞こえた。
幼い声だ。
てすと、がっこう。何を言ってるかわからないけど、俺は一度も外に出してもらったことがないから、俺の知らない外の世界の話でもしているんだろう。
俺より小さい子は外に行けてるのに俺はなんで駄目なんだろう?
ぽたぽた‥
雨だ。
気づけば俺は寝ていたのかすっかり周りは暗くなっている。
寒い。家に行きたい。母さんと父さんに会いたい。
いつも殴られてばっかりだけど、体を売られるけど。それでも会いたい。
寂しい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。