*°過去の話*°
「ふたりのことはもう忘れる。
けど、許さない。
あなたたちのせいで、
ひとつのいのちがきえました」
そんなハガキがとどいたのは、
サリナがいなくなって
3ヶ月がたったころだった。
わたしたちは、
ずっとサリナを探していたし、
待っていた。
しかし、サリナは、
忽然と居なくなった。
家族公認だったはずの
彼氏のカナタくんは、
事情を知っているだろうサリナの家族から
完璧に無視をされ、
サリナと繋がる方法はなかった。
わたしに届いたハガキを差し出すと
カナタくんは、
泣き崩れた。
サリナが居なくなった。
わたしたちの裏切りを知って。
そして、居なくなったのは
彼女だけではなかったのかも
しれなかった。
わたしたちは、
ハガキが届いたその日。
また、、関係を始めてしまった。
行き場のない気持ち。
苦しくて切なくてやるせなくて
後悔しかないくせにーー。
また、抱き合った。
抱き合ってしまった。
そうしないと自分を保てない。
それを言い訳に、、、抱き合った。
泣いているカナタくんをみて
わたしはそう言った。
欲しい。欲しかった。
本当はずっと。
どんなかたちでもいい。
カナタくんに、そばにいてほしい。
ずっとそばに。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!