毎日、ほとんど眠れていない。
罪悪感と言うやつだろうか。盗撮・録画、共に犯罪だ。私はその共犯になった。
馬渕には、橘さんにそのままでいて欲しい、女であって欲しいという明確な理由がある。でも、私は……?
もう一度橘さんを好きになった理由を思い出す。別に私は、顔で好きになったわけでも、理想に当てはめた訳でもない。ただ……
なのに……なんでこんなことになってんの?
急な橘さんに驚く。そっか、正門の前にずっと居たから……。というか、こんな早いなら馬渕も残っといた方が良かったかもな…。
…………私は、この人のことが好きだ。この人の素の性格が、ちゃんと好きだ。
でもこの人は男の人で……私の恋愛対象ではない。
じゃあ……どうすればいいのさ。馬渕仲間になってみたけど、私は容姿に惚れた訳では無い。女だったらいいとは確かに思うけど……
そっか……………簡単なことじゃん。
つい口を開いた。
要件を伝える。そして、感謝の言葉。
気恥ずかしくなってすぐ立ち去る。おつかいされた物……早く買わなきゃ……
あーあ。泣いちゃった。
そうだよ、恋愛対象性別じゃないなら、この気持ちは友情だもん。
でも…………私。
それでも。本気で橘のことが……
…………あー。馬鹿らし。
なんで急に好きなんて……?
それに……
遊馬との事も…………あるし…。
女でも…男でも好きって……
ずるい。自分だけ言って。俺だってずっと前から好きなのに……
大好き……なのにさ。
親父は眠ったまんま。"精神病"の類。薬などを飲んでいるらしい。
もし母親が生きていたら、もしかしたら今頃俺は男かもしれない。年をとったらいつか絶対身長は伸びるし、筋肉もつくはず。
だけど父親の場合……そんなのは関係ない。どんなに無理があっても俺を女としてみる。
もう、うんざりだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。