第25話

籠の外の部外者。
1,555
2021/01/01 11:34
周りは完全にお祭りムードだった。色んな声が聞き取れないぐらい交差して、それら全てが楽しい声として聞こえてきた。
遊馬
あれ…
遊馬
まりん……?!
夏目
あ…。や、やっほー、伊吹。
夏目 まりん。俺の女友達の1人である。
明るくて噂好きでザ・明るいという感じの子なのだが、今回はやけに清楚な着物を着こなしていた。いつもはポニーテールの髪の毛も下ろして全体的に大人っぽい。
馬渕
あら。花ちゃんは?見つからなかったの?おかしいわね…
さっきの口調を思い出し馬渕に少し警戒心を抱いたが……すぐに解けた。いつもの馬渕だ。
遊馬
なんか急用入った
みたいで帰るらしい。
馬渕
急用…?
キョトンとする馬渕に告げる。
遊馬
あぁ、なんか父親が……
馬渕
ッッ……!
まだ最後まで行ってないのに目を見開く馬渕。
馬渕
入院したのね……
遊馬
……え?あぁ、そうだけ……
馬渕
私も急用出来たから…!ごめんね…!
そういい走っていく馬渕。一体なんなんだ……?
夏目
…………あの人勝手だよねー…。
遊馬
あれ、まりんって
そんな接点あったか?
夏目
…………うーん…
まぁ、ちょっと趣味が同じ。
遊馬
へー…
趣味ってなんだろう。
あまり合いそうには見えないけど…
馬渕と橘のことも、馬渕とまりんのことも。
なにか触れちゃいけない一線がある気がしてならない…ってのは、俺がひよってるだけか。
遊馬
(そりゃ、知りたいよ。)
好きになってもらうのが恐怖とか言ってるくせして、図々しく嫉妬もするんです。
だから……認めたくないんだよ。


自己嫌悪になってしまう。



















夏目
うぅ……さっむ…。
両手で自分の体をつつみ息を吐く。こんな深夜に買い物頼みやがって…。
うちの親父ってば。酒のつまみくらい自分で買えや。
夏目
あ…馬渕?!
うちの家の近くの病院の正門の前に馬渕がいた。しかも寒がることも無くずっと病院の中を見ている。
夏目
あんた……何してんの?!
馬渕
…………中。
夏目
え?
馬渕
入れて貰えねぇんだよ。花織の面会行きたいんだけど、部外者だから。
夏目
…。
確かにこの病院は大きくて関係者以外一切入らせない病院だ。
夏目
で、何してんのさ。
馬渕
橘が帰るのを待ってんだよ。
夏目
え、あの初詣の時から?!
馬渕
あぁ。
夏目
ずっと?!
馬渕
まぁな。
まぁなって……普通に言わないでよ。
初詣も1月1日の朝の方にやったんだよ?それから今はもう深夜だし…え?丸一日?12時間以上いない?この人。怖くない?
夏目
……でも、流石に寒くない?
そろそろ帰ったら?
馬渕
…………チッ
馬渕
……わかった。
分かりやすくするな舌打ちを。わかりやすいんじゃお前は…。
馬渕がいなくなったあと、何となく私は病院の前に残っていた。

病院を見つめる。
夏目
(中に……橘さんが…。)
その時、色々な思いが込み上げてきた。

橘さん……私は今、どうすればいい?

プリ小説オーディオドラマ