私は弱い。
だからあの2人を止めることも
善逸に行かないでって、本音をいうこともできない。
弱虫だ。
相変わらずポーカーフェイスな彼が、いつの間にか私の後ろに立っていた。
さすがである、気配を感じなかった。
私はいつもどんな顔をしているのだろう。
いつもの顔じゃない、とは。
私がそう言うと、冨岡さんの眉間にシワが寄った。
その言葉に、私は思わず肩をビクつかせてしまった。
口を閉じてももう遅い。
さっきよりも深い溝を作ってしまった冨岡さんの眉間。
そんなとき、タイミング良く私の今一番会いたくなかった二人が現れた。
明らかに冨岡さんへ向ける声の高さと私に向ける声の高さが違う。
その表情を見ればもっとわかる。
美和ちゃんは冨岡さんの腕を引き、私から遠ざける。
もうあの痛みを感じるのは嫌だ。
そう思った私は咄嗟にその場の空気から立ち去ろうと、方向転換をした。
冨岡さんが私の腕を掴んだ。
はっとして美和ちゃんの後ろに目を向けると、善逸が悲しい顔で私の腕を見つめていた。
もう一度冨岡さんを呼ぶと、冨岡さんがはっとした表情で私の腕を離した。
そして再び、小さくそう呟いた。
真っ直ぐに私を見つめた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。