第9話

ななわ!
1,097
2020/02/04 09:35
私は弱い。
だからあの2人を止めることも
善逸に行かないでって、本音をいうこともできない。
弱虫だ。
冨岡 義勇
冨岡 義勇
...奇遇だな。
笹木 陽愛
笹木 陽愛
...!お、お久しぶりです、冨岡さん...
相変わらずポーカーフェイスな彼が、いつの間にか私の後ろに立っていた。
さすがである、気配を感じなかった。
冨岡 義勇
冨岡 義勇
.....何かあったのか?
笹木 陽愛
笹木 陽愛
え、何でですか?
冨岡 義勇
冨岡 義勇
いつもの顔じゃない
笹木 陽愛
笹木 陽愛
(どんな顔?)
私はいつもどんな顔をしているのだろう。
いつもの顔じゃない、とは。
冨岡 義勇
冨岡 義勇
...こんな所で何を?
笹木 陽愛
笹木 陽愛
...怪我をしたので、手当てをしてもらいに。
今は、少し外へ出かけようかなと。
私がそう言うと、冨岡さんの眉間にシワが寄った。
冨岡 義勇
冨岡 義勇
一人でか?
笹木 陽愛
笹木 陽愛
...まぁ、誰も行く相手が居ないので
冨岡 義勇
冨岡 義勇
いつものアイツはどうした?
その言葉に、私は思わず肩をビクつかせてしまった。
冨岡 義勇
冨岡 義勇
....怪我をしているのなら一人は危険だ
俺も行こう
笹木 陽愛
笹木 陽愛
え!?でも、用事があったんじゃ......
冨岡 義勇
冨岡 義勇
用は済んだ
笹木 陽愛
笹木 陽愛
でも、あの二人は冨岡さんの事を探して.....あ。
口を閉じてももう遅い。
冨岡 義勇
冨岡 義勇
...二人?
笹木 陽愛
笹木 陽愛
...いや、なんでも。
さっきよりも深い溝を作ってしまった冨岡さんの眉間。
そんなとき、タイミング良く私の今一番会いたくなかった二人が現れた。
立花 美和
立花 美和
こんな所に居たんですか!冨岡さん!
...って、あれ。ひなたもいるの?
明らかに冨岡さんへ向ける声の高さと私に向ける声の高さが違う。
その表情を見ればもっとわかる。
冨岡 義勇
冨岡 義勇
......誰だ?
立花 美和
立花 美和
やだ、忘れたんですか~?美和ですよ!!!
冨岡 義勇
冨岡 義勇
すまない、覚えていない
美和ちゃんは冨岡さんの腕を引き、私から遠ざける。
笹木 陽愛
笹木 陽愛
ぁ、そ、それじゃ!
もうあの痛みを感じるのは嫌だ。
そう思った私は咄嗟にその場の空気から立ち去ろうと、方向転換をした。
冨岡 義勇
冨岡 義勇
待て
笹木 陽愛
笹木 陽愛
な、何ですかィ...冨岡さんン......
冨岡 義勇
冨岡 義勇
なんだその口調
冨岡さんが私の腕を掴んだ。
はっとして美和ちゃんの後ろに目を向けると、善逸が悲しい顔で私の腕を見つめていた。
冨岡 義勇
冨岡 義勇
......
笹木 陽愛
笹木 陽愛
あの、冨岡さ....
もう一度冨岡さんを呼ぶと、冨岡さんがはっとした表情で私の腕を離した。
冨岡 義勇
冨岡 義勇
...俺も、行く
そして再び、小さくそう呟いた。
笹木 陽愛
笹木 陽愛
...え、い、いやいや!私1人でも大丈夫ですよ!
私より、2人の所に...
冨岡 義勇
冨岡 義勇
俺が、そうしたいと思った。
真っ直ぐに私を見つめた。

プリ小説オーディオドラマ