第36話

さんじゅうに!
945
2020/02/08 09:12
笹木 陽愛
笹木 陽愛
あの、手...
ここでハッとした。
こいつに逆らってしまったら。
桐山信次郎
桐山信次郎
善逸君、だったよね。
ねぇ君、陽愛ちゃんの事をここまで追い詰めてさ
都合よくまた連れ戻しにきたの?
我妻 善逸
我妻 善逸
......ッ
善逸の表情が暗くなる。
やめて、傷付けないで。
笹木 陽愛
笹木 陽愛
善逸は...悪くないんです。
我妻 善逸
我妻 善逸
.....陽愛......ちゃん
顔を上げた善逸の大きな瞳からは
ポロリと大粒の涙がこぼれ落ちた。
笹木 陽愛
笹木 陽愛
私が...悪かったの。
善逸は何も悪くないから、やめて...
それ以上、善逸に...酷いこと言わないでよ
桐山信次郎
桐山信次郎
......君、優しいんだね?
笹木 陽愛
笹木 陽愛
...ッ!
俯く私の顔を覗き込んだ信次郎さん。
......その表情は
先程まで感じていた不気味さよりはるか上、
まるで恐怖を覚えさせるような、そんな笑みを浮かべていた。
桐山信次郎
桐山信次郎
...分かったよ。もう言わない
でもさ、君は言うことあるよね?善逸君に。

...ほら、言ってごらん?
首の後ろを掴まれた。
その手はとてもひんやりしていて、余計に恐怖心を煽った。
笹木 陽愛
笹木 陽愛
...ごめ、
桐山信次郎
桐山信次郎
早く言ってよ。いいの?彼が
__“どうなっても“
......そんなの、良くないに決まってるよ。
彼が無事なら私はなんだってする。
笹木 陽愛
笹木 陽愛
......、善逸...。さっきも言った通り、
私はみんなと別行動する。

この人と、信次郎さんと組むことにしたの
我妻 善逸
我妻 善逸
.......ッ
あぁ、見たくなかった。
善逸のこんな表情を見るために従ってるわけじゃないのに...。
私は幸せになるなんて、できないのだろう。
出来ることならもう一度、あの頃に戻りたい__
我妻 善逸
我妻 善逸
......ッ嘘だ!!!
信次郎さんに肩を抱かれ、その場を後にしようとしたときだった。
善逸が私の手を掴んだ。
私が痛がらない程度の、優しい力で。
我妻 善逸
我妻 善逸
...っ、陽愛ちゃんの心臓の音、
何かに怯えてる。

お前が話す度に、陽愛ちゃんが怖がってる。
真剣な目で信次郎さんを睨む。
見るからに自分よりも年上で先輩だって事も分かるのに、それでも善逸は信次郎さんに立ち向かっていく。
変わってないなぁ。
やっぱり好きだなぁ。
私の視界もだんだんぼやけていく。
桐山信次郎
桐山信次郎
......うん。
それでもこの子は僕のものになったんだよ。
狂気さえ感じるこの人の言葉。
あぁ、声をかけられた時返事なんてしなければ良かった。
まさかこんなことになるなんて、思ってもいなかったから。

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