Ryo_
瑞「…は、?」
「「…え?」」
「…っ、」
あなたの言葉の意味が全くわからなかった。
どういうこと?
何、?
素直になっちゃいけないって。
なんでそんな事言うの?
素直にならなきゃ本当のこと言えなくなっちゃうじゃん、。
瑞「どういうこと」
「…私は、素直になっちゃいけない…」
瑞「誰に言われた」
「…親、祖父母」
瑞「話せ」
瑞稀がほぼ圧をかけるようにそう言うと、あなたはゆっくりと話し出した。
「…小さい頃は、全然こんなんじゃなかった。もっと、なんか、元気だったと思う…。いつ言われたとかわかんない…。そんな感じの内容だったとしか覚えてない…」
そこまで言うと、あなたは俺の隣に来て、膝を抱えて顔を埋めた。
小さくだけど肩が震えていて、思わず頭を撫でた。
嫌がられるかなとか思ったけど、あなたは何も言わず話を進めた。
「親が、いろいろ忙しい人で、家にいない日が何日もあった…県外だったり、海外だったり…。その度に祖父母の家に預けられた…。初めこそは『やだ』『着いていく』『行かないで』って、わがままばっかりだったけど…いつからか言わなくなって……『仕事だからしょうがない』……そうやって自分に言い聞かせた…それが例え、自分の誕生日でも……。忙しいんだもん…私がわがまま言って困らせちゃいけないって、そう思ってた…。
入学式も卒業式も、急な仕事の飛び込みで結局来てない…それが、嫌で、最後の入学式くらい、来て欲しかった…。だから、言っちゃった…。
『お仕事なんか行かないで。私より大事なの?お仕事ばっかり優先するママとパパは、大嫌い』
って…。案の定怒られたよ…。
でもね…怒ったのは、ママとパパじゃないんだ…。そばにいた、祖父母なんだ…。
その時に言われた…。
『我慢する子はいい子なんだ』って…。
…いい子になりたかったんだと思う…その日から、なんでも我慢するようになっちゃった…。いっぱい我慢して、ママとパパが帰ってきたら、うんと甘えてやろうって思ったのに…。その日の飛行機事故でお空に行っちゃった…結局その日のことも謝れてない…。
それから、祖父母に嫌われ始めたんだ…。私は結局…誰からも愛されなかった…」
話終わると、さらに顔を埋めたあなた。
あなたの話は、思っていたより、悲しみと苦しさで溢れていた。
でも違う。
誰からも愛されてないなんて、そんなことはない。
涼「あなたは、ちゃんと愛されてるよ…」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。