喜多くんの屈託ない明るいテンションと可愛過ぎる仁志くんの笑顔を目の当たりにして、ハイエナのように三人の周りに群がっていた女子たちの勢いが途端に緩む。
やはり、愛でたいもの。愛するのものには弱いだろう。そんな彼らの嬉しそうな表情を目撃して尚、妨害を企てる女子はいないようだ。
ある意味、現金。ある意味、可愛らしい彼女たちの愛の形に突っ込みを入れるのも無粋な気がして、裏庭に向かおうとする。すると、手元のパンを吾妻くんがスルリと奪い、極上の笑みを浮かべて前を歩いて行く。
そう言った彼の本当の狙いが分かったからこそ、私は素直にお礼を述べることにした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。