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購買からの帰り道。
俺は風磨の話を深く聞かなかった。
あの人が俺から笑顔を奪う人だってわかってても俺にはあの人を嫌いになる事なんて出来ない。まるで深い沼にハマったみたいに前や後に進むこともできない。
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その日の放課後。
駅に着くと先に来ていた先輩を見つけた。
『最近』っていう言葉にピクッと耳が反応した。
そんな話をして金曜日が終わった。たった1週間で
こんなに距離が縮まるなんて思ってなかったな。
今がとても幸せ。
月曜日。
私は寝坊をしてしまって朝、先輩に会うことができなかった。帰りも委員会が入って会えなくて。先輩に会えない1日がこんなに辛くなるほど、先輩に会える日が当たり前になってしまった事にビックリした。
火曜日。
朝、電車に乗ると違う車両に先輩を見つけた。
でも、私の視界には悲しい微笑み
をする先輩と仲良さそうに話す女性が映った。
少し動揺してから私の頭には美穂の言葉が浮かんだ。
この人の事だ。
噂なんて嘘だって思ってたのに。
私は先輩を見る事ができなくて視線を逸らした。
キーンコーンカーンコーン
鐘の音でハッとすると1限が始まる時間になっていた。
慌てて教科書を準備するといつもと違う先生が入ってきた。私はその顔をみて一瞬固まった。
ツンツン
3年1組って事は中島先輩の担任って事。
そう言えば、金曜日。
って。
今日の目撃と先輩の発言が頭の中で重なった。
先輩が恋してるのは担任の先生って事。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!