日差しが強くなって、
コンクリートからくる熱気と
セミのうるさいほどの鳴き声が
私の体感温度を上げていく。
待ってない、そう伝えるとニコッと笑う友達。
今日は私の誕生日だから
そう言って友達が私を水族館へ連れて行ってくれるらしい。
初めて来た水族館は
小さくてこじんまりしていたが
外装はとても可愛らしく
私のテンションも温度と一緒に上がった。
入ってすぐのクラゲのコーナー。
うるさかったセミの鳴き声が聞こえなくなり
クラゲを一通り見終わる頃には
汗も引いていた。
私の手を引いてテンションの上がる友達。
2人でエイのいる水槽に釘付け。
私はペンギンのコーナーを探すため
案内板を見上げる。
私の声に重なる私よりも少し低い声。
私は思わず横を見る。
隣にいた男の子もおんなじことを思ったのか
こちらを見ていた。
そう言うと彼はもう一度案内板を見上げる。
その横顔がとてもきれいで、
つい見惚れてしまう。
どことなく気まずかった静寂を
破ってくれた友達。
私は、彼女のもとへいこうと
隣にいた彼の隣を通り過ぎようとした。
その声と同時に掴まれる腕。
私はびっくりして、振り返る。
すごい汗をかいて、まっすぐこちらを見て
少し焦りながらも淡々と降ってくる
彼の言葉たちに、戸惑う。
君に一目惚れしたみたい?
君に一目惚れしたみたい?
何も悪いことはしてないのに、必死に謝る彼の姿が
なんだか面白くて、可愛くて、
私は思わず吹き出してしまう。
彼びっくりしながらも、私につられて笑っていた。
私がそう伝えると
もともとニコニコしてて明るい彼の表情が
もう一段明るくなったのがわかった。
そう言って交換した電話番号。
彼の名前だろうか、男の子の声に顔を上げる彼。
彼はもう一度、私を見てなにか言いたげにしている。
私が、首を傾げると、
顔を少し赤くして首を降る。
私にそれを聞くためにあんな顔してたんだ。
私はまた面白くなってしまう。
照れくさそうに笑う彼。
なんだか離れがたい。
2回目の私を呼ぶ声。
そう言って手を降ってくれた彼に
私も小さく手を降った。
君との恋が始まった日。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。