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第4話

税込286円
23
2021/05/14 01:01
8月初旬の昼間は、茹だるような暑さだった。
背中にTシャツがはりついて気持ち悪い。
横目に見える公園で散歩している小型犬も、息を荒くしてぐったりしている。
その横では、小学生たちが汗を撒き散らしながら走り回っているが。

日差しを直に浴びせられている黒髪に触れると、熱した鉄板のように熱かった。
これは、黒髪だからこんなに熱いんだろうか。そんなことならいっそ夏季限定で金髪にしてしまおうか。

碧は首の汗を手で拭うと、暑さに耐えかねて、たまたま目に入ったコンビニに逃げ込んだ。
自動ドアが人の姿に反応して、碧の全身にぶわっと冷気が直撃する。
いらっしゃいませ
…と、聞こえるか否か程度の滑舌で、涼しい顔をした店員がぼそりと言う。

あー…そういえば、昼飯なかったな。
出入口目の前に設置された惣菜コーナーが目に入り、碧は家の冷蔵庫を思い浮かべた。
とりあえず、適当にパンでも買って、帰ったら食おう。
あと、ついでに暑いからアイスも。

碧はパンコーナーを物色し、焼きそばパンに手を伸ばした。
それを手で掴んだと同時に、碧の背中からぬうっと、明らかに自分のものではない腕が伸びてきて、同じ焼きそばパン…と、碧の手ごと掴んできた。
「……!!?」
碧は両肩を電気ショックを食らったように飛び跳ねさせ、後ろを振り向いた。
そいつは笑っていた。

「よお」
「は……?」

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