朱里が玄関のドアを開け、一番に目にしたのは──────
にこやかな笑顔をこちらに向け手を挙げる太宰だった。
朱里たちが向かう先は、立てこもりの現場であった。
朝一番の依頼であったが、国木田は書類仕事で忙しかった。他のメンバーも仕事が入っていたらしい。
そして、朱里たちの元に仕事が回ってきたのである。
谷崎も同様の理由だ。
谷崎がへにゃりと微笑んだ。
太宰の言葉に、谷崎が苦笑しながら答える。
などと話をしながら現場に向かった。
事件の現場は、古びた廃ビルだった。今にも崩れそうだ。
警察に状況を聞いたところ、犯人は女性で人質が1人いるそうだ。
朱里は、犯人の元に1人で出た。
念の為にうしろには太宰、谷崎も控えている。
その言葉は最後まで言えなかった。
──────犯人は、既に取り押さえられていた。
辺りに静けさが広まる。
太宰に言われると、朱里は犯人から離れた。
太宰がニコニコと答えている。
人質であったはずの少女は谷崎に抱きついている。
────────────────
協力してもらった警察に礼を言い、一同は社に戻ることとなった。
騒ぐ太宰に、それを必死に止める谷崎。
そんな、探偵社の日常に───────
朱里の心は動いた。
──朱里の言葉の直後だった。
直美の頭上に、ビルの一部が崩れて落ちてきている。
これから襲うであろう痛みに、ナオミは目を閉じた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!