昼休み以降も、胸が握りつぶされているような苦しみは続き、授業の内容も全て耳から流れてしまった。
この原因は、木下さんが小原くんに恋していると知ったこと。でも、なんでこんなに胸をしめつけるのかがわからない。
松浦くんに聞けば、わかるかな。
ホームルームが終わると、私は6組に向かった。
小原くんはゆりにゃんという使命があるから、いつものように教室にはいないはず。
木下さんには、小原くんはいなかったから明日伝えるって言えば、今日はしのげる。
そして、松浦くんにこの胸の苦しさを相談しよう。
でも、今日は本当に運がなかった。
いつもクラスの中で一番ホームルームが早く終わる6組が、まだ終わっていなかったのだ。
戸の窓部分をのぞくと、担任の女性教師が怒っているように見えた。誰かが不祥事を起こしたのかもしれない。
嘘でしょ……。
戸の横で私は固まってしまった。
やがて、出てきた小原くんが私に気がついた。
私の思考は完全に停止した。
のどにつっかえそうになりながらも、なんとか言葉を紡いだ。
小原くんは、あっさりと私に背を向けて行ってしまった。
とっさに口から、待って、が飛び出しそうになったが、私はぐっと飲み込んだ。
木下さんが小原くんに告白しようが、私には関係ないこと。
なのに、なんでこんなに……。
教室から出てきた松浦くんが私に気づいた。
松浦くんは私の手を引いて、中庭に連れていってくれた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。