目的地の駅に着くと、小原くんは近くのデパートに行こうと提案した。
そうだ、今日は小原くんの買い物に付き合うことが私のミッション。多分、私は荷物持ちとして呼ばれたに違いない。
ファッションでがっかりさせた分、力仕事で挽回しなきゃ!
心のなかで気合いを入れ、小原くんの後ろを着いていった。
ところで、何を買いにきたんだろう。夏服かな、それとも靴?
きっと小原くんが行きつけのお店は超オシャレなんだろうなあ。
なんだか、一緒に店に入りにくいかも……こんな格好だし。
ついさっきまで、あんなに意気込んでた気持ちが急降下していく中、急に小原くんの足が止まり、もうちょっとで背中に激突しそうになった。
あ、危なかった……。
小原くんの背中で視界が隠れているので、ひょこっと顔をのぞかせてお店を見てみると……。
思わず、驚きが漏れてしまった。
ショーウィンドウに並ぶ、私より百倍可愛い夏ファッションに身を包んだマネキンたちに、全身からオシャレオーラを放つ女性店員さん。
こ、ここが小原くんが買い物する店……?
ただ立ち尽くすことしかできない私に、小原くんはフフッと笑った。
な、なんかこの展開、前にもあったような……。
これで何着目だろう。私はひたすら、小原くんが選んだ服を試着し続けている。
今、渡されたのは真っ白なロングワンピース。半袖が花柄レースで、可愛いしおしとやかな雰囲気が出ている。
普段の私なら、こんなの似合うわけないと怖じ気づくところ。でも、嫌ほど可愛い服を着れば、気にならなくなった。
それに……。
試着室からそのワンピース姿を見せると、なぜか、小原くんは自分のことのように幸せそうな笑みを浮かべる。
この笑顔を見るとどうしても、可愛い服を着てよかったと、もっとたくさん着たいと思ってしまう。
一番小原くんの笑顔が素敵だったときは……。
私は今着ているワンピースのすそを摘まんだ。
だって……私には白が似合うんでしょ!?
小原くんが言うなら間違いないよね!?
や、やっと決まった……。
その後、ワンピースを脱ぎ、ようやく試着室から出ることができた。
小原くんにワンピースを渡し、疲れたので店の外にあるベンチに座って待つことにした。
ふう……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。