緑に染まった木の下のベンチに座り、私はただ地面を見つめていた。
松浦くんが、自動販売機で買ってきてくれたミルクティーを差し出してきた。
私はミルクティーを受け取った。でも、松浦くんには悪いけど、飲む気にはなれなかった。
缶を開けないでいると、松浦くんが隣に座ってきた。
松浦くんの声のトーンはいつもと同じなのに、すごく優しい感じがした。
でも、私と小原くんの間でなにかあったわけじゃない。ただ、私が……
木下さんが小原くんに告白することを知ったとき、今までに経験したことがない痛みが胸を襲った。
今でもすごく苦しくて……なぜか、切ない。
意外にも、松浦くんは驚かなかった。
え、そうなの?
私は顔を上げて、松浦くんを見た。表情は穏やかだけど、私を真っ直ぐ見つめている瞳から、本気さが伝わってきた。
痛みの正体か……。
今の私には、まだわからない。
でも、松浦くんのおかげで、少し気持ちが軽くなった。この痛みを感じるのは、私だけじゃないんだ。
私は自然と笑みがこぼれた。ギャグが面白いんじゃなくて、私を和ませようとしてくれる気持ちが嬉しくて。
すると、手に持っていたコーラの缶を開けないまま、松浦くんが立ち上がった。
それは絶対嫌だ! もし、小原くんが告白を受け入れたことを知ってしまったら、もう生きていけない気がする。
私はとっさにうつむいた。
突然、松浦くんの両手が私の顔を包んで前に向くように持ち上げた。
一瞬で私の顔はトマトになった。
ひええっ、近い近い! いくら松浦くんでも、イケメンのどアップは色々やばいっ!
今すぐ顔をそらしたいけど、松浦くんの手にがっちりホールドされて動けない。
こんな姿を女子に見られたら殺される!!!
意地悪そうにニヤッと笑う、松浦くん。
これ、セリフだけだともっとやばく感じる……じゃなくて!
そう叫ぶと、私の顔は解放された。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。