驚きすぎて感情がマヒしたのか、ビンタする怒りも沸かなかった。そんな私に構わず、彼は私の胸を観察し始めた。
これ、立派なセクハラじゃない?
でも、彼の分析はあながち間違っていなかった。
私はスポーツブラを愛用している。速乾性で胸の揺れも抑えられて運動にはぴったりだが、バストを綺麗に整えることはできない。
運悪く、今日私が着けているのは使い込まれてヨレヨレのもの。
まさか、胸のダメ出しを男子にされるなんて、夢にも思わなかったよ……。
とにかく、ここから逃げたい!
私は彼の横を通り抜けようとした。
両肩を掴まれ、あっけなく私は制止した。顔を上げると、ズイッと彼の顔がどアップされて息が止まりそうになる。
も、もうダメッ………!
……え? もしかしてこれ、放課後デートのお誘い?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!