全然知らなかった。
どうせ調べても余計に傷つくだけだと思っていたから。さっさと調べておけばよかった。
私が無知だったから、木下さんに反抗できなかった。両親にやつあたりをしていた。
すごく、両親に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
小原くんは鞄を肩にかけた。
小原くんは伝票を手に取り、早足でレジへ向かっていった。長い脚なのであっという間に姿が見えなくなってしまった。
私も鞄を肩にかけ、慌ててレジへ向かったが、既に小原くんはいなかった。
……あ。私に合うブラを探したかった理由を聞いてなかったわ。
まあ、これからは学校で会いにいけるからいっか。
次の日。
放課後、私が鞄に教科書やノートを詰め込んでいると、いつものように木下さんがやってきた。
まさか、もえちゃんがあたしの言葉を遮るなんて……と思っているような、木下さんはそんな驚いた顔をした。
私は席を立ち、木下さんと向き合った。昨日買ったブラのおかげか、堂々と胸を張っていられる。
こんなに堂々と人に反抗したのは初めてかもしれない。
背中を押してくれたのは、小原くんだ。
改めてお礼をしたいな。
呆然と固まっている木下さんを気にせず、私は鞄を肩にかけて教室を後にした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。