あっという間に夏休みが終わり、二学期が始まった。
夏の暑さがまだ冷めないので、服装は一学期の終わりと変わらない。
二学期といえば、この高校の生徒なら真っ先に文化祭が頭に浮かぶ。それくらい、文化祭はビッグイベントである。
そして今、私のクラスも文化祭について話し合いをしている。
今年の一年生は、体育館でステージ発表をしなければならない。
黒板には、ダンス、合唱、シンデレラの劇などが書かれた。
うう、どれもやりたくない……。
でも、一回は手をあげなきゃいけないし……裏方になれる可能性があるから、劇にしよう。
すると、他のクラスは何をするのか聞きに行っていた学級委員長が戻ってきた。そのまま黒板の前に立ち、シンデレラの上にチョークで線を引いてしまった。
ちょ、なんで!?
6組って、小原くんのクラスだ! もしかしたら、小原くんが王子役になるかも……。
そう考えたとたん、一筋の汗が背中を流れた。
き、木下さん、ナイスアイデア。
でも、学級委員長の表情は変わらなかった。
え。
昼休みになると、私はお弁当を持って急いで6組に向かった。どうしても、6組のシンデレラについて聞きたかった。
教室の中をうかがうと、小原くんと松浦くんを発見した。ふたりとも、まだお弁当を食べ始めていなかった。
チャンス!!!
私はズカズカと教室に入ると、ふたりに声をかけた。
久しぶりの小原くんに、ほおがゆるみそうになったけど、歯をくいしばった。
松浦くんは、まいったように頭をかいた。
だって、男子が女装しなくちゃいけないもんね。
って、女装……?
まさか!
私が恐る恐る聞くと、小原くんが嬉しそうに答えた。
さっきとは比べものにならないくらい、大量の汗が背中を流れた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。