第33話

まさかのシンデレラ
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2020/12/14 00:54
 あっという間に夏休みが終わり、二学期が始まった。

 夏の暑さがまだ冷めないので、服装は一学期の終わりと変わらない。







 二学期といえば、この高校の生徒なら真っ先に文化祭が頭に浮かぶ。それくらい、文化祭はビッグイベントである。

 そして今、私のクラスも文化祭について話し合いをしている。

 今年の一年生は、体育館でステージ発表をしなければならない。

 黒板には、ダンス、合唱、シンデレラの劇などが書かれた。





 うう、どれもやりたくない……。

 でも、一回は手をあげなきゃいけないし……裏方になれる可能性があるから、劇にしよう。

 すると、他のクラスは何をするのか聞きに行っていた学級委員長が戻ってきた。そのまま黒板の前に立ち、シンデレラの上にチョークで線を引いてしまった。


 ちょ、なんで!?
眼鏡が似合う学級委員長
6組がシンデレラに決まりました。演目が被るのは避けたいので、こちらは除外します
 6組って、小原くんのクラスだ! もしかしたら、小原くんが王子役になるかも……。

 そう考えたとたん、一筋の汗が背中を流れた。











木下 貴子
演目が被ってても、なんかアレンジすればいけるんじゃない?
 き、木下さん、ナイスアイデア。


 でも、学級委員長の表情は変わらなかった。
眼鏡が似合う学級委員長
6組もただのシンデレラではなく、男女の役をいれかえたシンデレラなんです。これ以上のインパクトあるアイデアが思いつきますか?




 え。

1年1組のみんな
ええええええええええっ!?
 
















 昼休みになると、私はお弁当を持って急いで6組に向かった。どうしても、6組のシンデレラについて聞きたかった。

 教室の中をうかがうと、小原くんと松浦くんを発見した。ふたりとも、まだお弁当を食べ始めていなかった。

 


 チャンス!!!


 私はズカズカと教室に入ると、ふたりに声をかけた。
小原くん
山本さん、久しぶりだな
 久しぶりの小原くんに、ほおがゆるみそうになったけど、歯をくいしばった。
山本 萌
なんか、とんでもないシンデレラに決まったって聞いたんだけど
松浦くん
情報行くのはやっ! メグちゃんの言う通りだよ。女子たちの団結におされてさ~
 松浦くんは、まいったように頭をかいた。
だって、男子が女装しなくちゃいけないもんね。
















 って、女装……?










 まさか!
山本 萌
や、役ってもう決まったの……?
 私が恐る恐る聞くと、小原くんが嬉しそうに答えた。
小原くん
ああ、だいたい決まってな。俺がシンデレラをやることになった
 
 さっきとは比べものにならないくらい、大量の汗が背中を流れた。

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