太陽が人間を焼いてやろうと照り輝き、外ではセミが一生懸命鳴く時期になってきた。
でも、今の私はそんなの気にならない。
なぜなら、あの日から小原くんに会えていないからだ。
どうして?
こっちが聞きたいわ!
木下さんが徐々に絡んでこなくなった報告と改めてのお礼を兼ねて、放課後に6組を訪ねているが、いつも既に下校している。
今日も6組に向かっているけど、結果は同じだとしか考えられなくなってきた。
もしかして、避けられてるのかな……。
いやいや、さらにネガティブになるな、私。もしかしたら、奇跡が起こるかもしれない。
当たって砕けろ!
……結構砕けまくってるけど。
頭でぶつぶつ言っているうちに、6組の教室に着いた。
引き戸を開けて顔をのぞくと、いつも小原くんはいないと答えてくれる男子と目が合った。
彼は、小原くんの友人の松浦 亨くん。
ガッチリした上半身が特有のサッカー部所属で、白い歯が爽やかな笑顔から、彼のフレンドリーさが伝わってくる。
初めて会ったとき、いつものように私は固まってしまったが、彼の持ち前の明るさのおかげで今ではすっかり友だちだ。
はい、今日も見事に砕け散りました。
私はガクッとうなだれた。
ま、まさかのふいうち、放課後デートのお誘い!?
ど、どうしよう……。
き、奇跡が起こった。このチャンスを逃すわけにはいかない!
すっかり興奮している私を見て、松浦くんはおかしそうに白い歯を見せた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。