確かに、小原くんは背が高い。帰宅部なのにサッカー部の松浦くんを抜いている。恐らく、180cmに届いているはず。
ちなみに私は150cmギリギリ。身体測定のたびに長身の同級生たちがうらやましかった。
背が高い人は勝ち組だと思っていたけど、それが嫌な人もいるんだ……。
小原くんが私を着せ替え人形として見ていた気持ちを、ちょっとだけ理解できたかもしれない。
松浦くんの怒りをさえぎるように、のどから勝手に言葉が飛び出した。
お互いちょっと驚いたけど、私はそのまま自分の思いを言葉にした。
松浦くんが目を見開いた。多分、松浦くんが気づいたことは合っていると思う。
だって、彼はとても優しいから、相手のことがよくわかる。
小原くんがゆりにゃんだという、すごい秘密を知れたとき、嬉しくて胸がドキドキした。
木下さんが小原くんと付き合ったらって考えたとき、胸が痛かった。
この現象が起こる原因は、ひとつしかない。
心のどこかでは、もうわかっていたはずだけど、受け入れるのが怖い自分が邪魔をしていた。
だって、私は小原くんにとって、恋愛対象ではないことを知ってしまったから。
それでも。
部屋が沈黙に包まれる。
とたんに、私は今自分が言ったことの恥ずかしさに気づいた。一気に身体中が熱くなって、そして今の顔を見られたくなくてうつむいた。
男友達の前で何告白しちゃってんだああああっ!
……え?
顔を上げると、顔をくしゃくしゃにして涙を流す松浦くんが目に飛び込んできた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。