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第1話

第1話 ー始まりの物語ー
_____早朝、人が騒がしくない
静かな時間に、大庭園広がる黒屋敷の2階で

分厚い本を抱え読み耽っている
コーヒー色の髪色をした少女が窓辺に
座っていた。
彼女の名は、セレネ。溜息ためいきを吐くと
静かに『クリスタルと戦いの王』という
伝記をパタンと閉じた。
セレネ・レークンヴィスト
セレネ・レークンヴィスト
あんまり面白くなかったわね…
むしろ詰まらなかったわ
セレネ・レークンヴィスト
セレネ・レークンヴィスト
この作家さんの書物は沢山読んだけれど、この伝記は最悪ね…読まない方が良ぐらいよ
可愛らしい見た目からは、想像しがたい
毒舌っぷりである。

セレネ・レークンヴィスト
セレネ・レークンヴィスト
もうすぐ6時…お姉さま方を
起こす時間だわ…
時計を見入る彼女の瞳は
どことなく冷たい感じがした。
セレネ・レークンヴィスト
セレネ・レークンヴィスト
もう、20過ぎなのだから、自分で起きてくださっても、いいのだけれども…
そう、人に聞こえるか聞こえないか
ぐらいのか細い声で呟いた後、セレネは
袖をたくし上げて自室から出て行ってしまった。
彼女はこのレークンヴィスト家の
3女である。

上には、双子の姉達がいて、身の回りの
世話や家事全般を任せられていた。

母親は居るが、セレネのことを助けては
くれない。双子のことを溺愛している母親に
とって、末っ子のセレネは存在しないも同然
だった。

それも、そのはず…セレネは双子姉と血縁は
繋がっておらず、亡くなった夫の隠し子を、
この屋敷で引き取ったのだから。
セレネ・レークンヴィスト
セレネ・レークンヴィスト
お姉さま、起きてくださいな
ロゼッタ
ロゼッタ
うるさい、朝から私に指図しないで!
セレネ・レークンヴィスト
セレネ・レークンヴィスト
昨日の晩、起こして欲しいと頼んだ
のは、お姉さまの方でしょう?
ミーシェ
ミーシェ
気が変わったのよね? ロゼッタ
ロゼッタ
ロゼッタ
・・・え? ええ、そうよ
だから早く部屋から出て行ってよ!
セレネ・レークンヴィスト
セレネ・レークンヴィスト
わかりました。
こんな理不尽なやり取りを続けてきて、
セレネはこの屋敷で17歳を迎えた。

(いつか、この屋敷から飛び出して自由になりたい)
(自分自身の生きている理由を知りたい)

セレネは、誰にも言えず、誰にも言わず、
自分の心の中だけでそう考えるようになった。
彼女を縛る錠が解かれ
いつしか自由になれる時が来る…
セレネは、そう信じていた。

彼女の意思とは無関係に
この物語のページは、次の頁を
めくっていた_____
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
今日こそ、仕事で雇ってもらえなかったら
黒髪の青年
黒髪の青年
黙れ、今は考えたくない
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
…ごめん


続く▶︎▶︎▶︎