第3話

第3話 ー契約が決まった兄ー
今日も市場は、沢山の人で
溢れかえっていた。
ラビ族のメイド
ラビ族のメイド
すみません、人参を箱で
お願いします。
男性
男性
はいよ。いつもありがとね
エルフ族の女の子
エルフ族の女の子
退屈〜、今日はまだデザートを
食べに行けてないわよ?
エルフ族の女性
エルフ族の女性
少し大人しくしていなさい。
修道院帰りの娘が、デザートとは
何事ですか!
晴々とした青空の中、バザー通りの
一角では、あの獣族の青年達が、静かに
話し合っていた。
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
兄さん、これから
どうすれば良い?
黒髪の青年
黒髪の青年
知るか。俺に聞くな
オレンジ髪の青年と、黒髪の青年は、
どうやら兄弟関係らしい。
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
俺、兄さんと離れたくない
ずっと一緒にいたいよ…
弟の方は、少し涙ぐみながら
そう訴えるが、兄の方は、話をまるで
聞いていなかった。
黒髪の青年
黒髪の青年
生きていくためだ…仕方がないだろ。
自分の運命を受け入れろ
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
そこに、1人の男性が現れた。
銀髪の男性
銀髪の男性
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
黒髪の青年
黒髪の青年
エルウィッグさん
エルウィッグさん
ど、どうかなされました?
何か気になることでも
男性は、仕事募集中の看板を見つめると、
エルウィッグさんにこう言った。
銀髪の男性
銀髪の男性
彼を僕の助手として
雇いたいんだけど構わない?
エルウィッグさん
エルウィッグさん
は! 仕事契約希望の方ですか!
これは、ありがたい…それでどちらの
方です?
エルウィッグさんは、嬉しそうに
前屈みの姿勢でそう言った。
銀髪の男性
銀髪の男性
うーん…じゃあ、こっちの黒髪の君で
黒髪の青年
黒髪の青年
銀髪の男性は、黒髪の青年の手を
引くと自分の方へ、引き寄せた。
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
兄さん!
銀髪の男性
銀髪の男性
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
あの、俺も一緒じゃ
ダメですか?
エルウィッグさん
エルウィッグさん
コラ、静かにしていなさい。
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
兄さんと離れたくないんです‼︎
黒髪の青年
黒髪の青年
銀髪の男性
銀髪の男性
う〜ん、君たちもしかして
兄弟?そうすると、お兄さんの方
だけじゃ契約できないのかな?
エルウィッグさん
エルウィッグさん
そ、そんなことありませんよ‼︎
1人だけでも、契約はできますとも。
銀髪の男性
銀髪の男性
君は、どうしたい?
銀髪の男性は、黒髪の青年に
そう聞いたが、返事は返ってこなかった。
銀髪の男性
銀髪の男性
困ったね。僕もそんなに裕福な方では
なくてね。
銀髪の男性
銀髪の男性
お兄さんの方の契約金を
払うのが、今は精一杯だ。
銀髪の男性
銀髪の男性
だから___
銀髪の男性は、サラサラと自分の
手帳に何かを書き出すと、そのページを破り、
弟に手渡した。
銀髪の男性
銀髪の男性
これが、僕の鑑定事務所の住所ね。
もし、契約金を誰かに払ってもらえ
たら、ここに来てもらっても構わないよ。
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
あ、ありがとうございます。
銀髪の男性
銀髪の男性
じゃあね
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
黒髪の青年
黒髪の青年
見つめ続ける弟に目もくれず、兄は背中を向け銀髪の男性と、市場の中へと消えて行ってしまった。
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
初めての一人…
生まれてから、ずっと一緒に
暮らしてきた兄は、もう隣にはいない。

孤独と不安が、取り残された
弟の心をかき乱す。
エルウィッグさん
エルウィッグさん
後は、お前だけか…
オレンジ髪の青年
オレンジ髪の青年
俺、どうすれば
エルウィッグさん
エルウィッグさん
待つしかないだろう。アーノア、お前を
必要としてくれる人を。
アーノア・オリファント
アーノア・オリファント
僕を、必要としてくれる人…
___その時だった‼︎
セレネ・レークンヴィスト
セレネ・レークンヴィスト
イヤ‼︎ 離して、それは大事な
メモと財布が‼︎ キャアッ‼︎
アーノア・オリファント
アーノア・オリファント
市場の真ん中で、何やら
もめている声がする…
パシッ‼︎
盗人
盗人
へへ、頂き‼︎
アーノア・オリファント
アーノア・オリファント
あれは___‼︎
セレネ・レークンヴィスト
セレネ・レークンヴィスト
誰か‼︎ お願いです‼︎ 
その籠を取り返して下さい‼︎
少女の叫び声が聞こえた次の瞬間、
悪党顔の盗人が、アーノアの前を走り
去って行った。
アーノア・オリファント
アーノア・オリファント
取り返してあげなきゃ___
気が付けば、アーノアも
自分でも驚く様な速さで、少女の籠を
盗んだ男の跡を、無我夢中で追いかけていた。


続く▶︎▶︎▶︎