今日も市場は、沢山の人で
溢れかえっていた。
晴々とした青空の中、バザー通りの
一角では、あの獣族の青年達が、静かに
話し合っていた。
オレンジ髪の青年と、黒髪の青年は、
どうやら兄弟関係らしい。
弟の方は、少し涙ぐみながら
そう訴えるが、兄の方は、話をまるで
聞いていなかった。
そこに、1人の男性が現れた。
男性は、仕事募集中の看板を見つめると、
エルウィッグさんにこう言った。
エルウィッグさんは、嬉しそうに
前屈みの姿勢でそう言った。
銀髪の男性は、黒髪の青年の手を
引くと自分の方へ、引き寄せた。
銀髪の男性は、黒髪の青年に
そう聞いたが、返事は返ってこなかった。
銀髪の男性は、サラサラと自分の
手帳に何かを書き出すと、その頁を破り、
弟に手渡した。
見つめ続ける弟に目もくれず、兄は背中を向け銀髪の男性と、市場の中へと消えて行ってしまった。
初めての一人…
生まれてから、ずっと一緒に
暮らしてきた兄は、もう隣にはいない。
孤独と不安が、取り残された
弟の心をかき乱す。
___その時だった‼︎
市場の真ん中で、何やら
もめている声がする…
パシッ‼︎
少女の叫び声が聞こえた次の瞬間、
悪党顔の盗人が、アーノアの前を走り
去って行った。
気が付けば、アーノアも
自分でも驚く様な速さで、少女の籠を
盗んだ男の跡を、無我夢中で追いかけていた。
続く▶︎▶︎▶︎
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。