第36話

花吐き
1,447
2021/04/06 02:29
神山side
俺はかなり昔、幼少期からの病持ちだ。

と、言っても、人に理解され難い病気なのだ。



花吐き病 なんて病名で 、

まぁ言ってみれば名前 のまんまな病 。





花を、吐き出してしまう。




恋愛における精神的ストレスによって 発症する 、

なんて 病んでいるみたいで恥ずかしいが。

まぁ、それにより発症することは分かっている。




-胸の辺りが締まったように苦しくなって、
喉に激痛が走る。



強い嘔吐感に見舞われ、頭痛にも同時にかかる。-



辛いんだ。



口から花が出せるなんて 素敵 、

ファンタジーみたい 。~





‥ とぼけるな。

医師によると花は唾液ではなく特殊な
露に包まれているらしいが、
喉から出た汚物に変わりはない。

俺自身、あまり触りたくない。


のだが。

最近、激しい嘔吐感に見舞われる事が続いてある。

そういうことからは距離を置いていたのに。


病のことから自分自身、
卑屈になっているな、というところがあって。
でも、恋愛で煩わされるのが嫌なんだ。

でも、ここまで連続で花を吐いて来たら、

恋愛から距離を置くことも難しくなってきた。

もう、自分に素直になろう、


てことで。

まずは 、分析から 。

と思って 、



・自分がいつ吐いたか
・誰の何によって吐いたか
・花の名前
・痛みの軽度


こんな感じで、いちいちこれをつけていった。

基本的に、思い当たる節はいくつか。

メンバーを、ふとみた時。


て、俺、なんでメンバーに
『 恋愛における精神的ストレス 』
抱えてんだ、

俺、そういう趣味はないのだが 。

泣きたい気分だ 。



恋愛感情はともかく、メンバー に
ときめいてはいるのは確定 。


こういう時 、
俺が奥手で卑屈なのが悔やまれる。

こんなことを考えていたら、
胸、喉の辺りが詰まる。
神ちゃん
ぉ゙   、ごほぇ  、ぇっほん  、
最悪だ、花が出る。

一日ぶりだな。


喉に違和感が走る。
喉を登ってくるような感覚 、
露全体に押し上げられる感覚。



喉をすごい勢いで登ってきて 、
口から露が少し流れ落ちる 。




苦痛はすぐ消し去りたいから、
口に手を突っ込み花を取り出す。

手から口に、甘い味の蜜が糸を引く 。







赤い花。ピンクに見える紅色。

ツツジにも見える。

調べてみると、オシロイバナ、と言うらしい。


花言葉は、『臆病』『内気』『恋を疑う』。



当たり 。恋が怖い 。

恋に恋でもしているのか、と

ふと意識してしまい、

この花の様に 、顔が赤らんだ 。
神ちゃん
ええわ   !寝てまお  !
無意識な大きな独り言を放ち、顔を叩く。

明日はメンバー全員との冠番組の収録。

何故か少し憂鬱だが忘れておこう。





☀✨

あんなに憂鬱だったはずなのに、
何故か目だけは覚めて。

でも、天気が良いからか、
幾らかは元気になっている。

むしろ、明るくなっている。
神山智洋、本調子です!

メンバーとの絡みがあるんやろなー、
なんて思っても、そこまで嫌な気はしていない。

神ちゃん
んん   、~   くぁ  、‥
軽く伸びと欠伸をする。
またも軽く着替え、
軽く食事をする。

明るくなりすぎ 、自覚あります 。




軽く病むことがあって、
1日寝たら治るが 、割と根に持つタイプ 。
自分でも気になっている。
神ちゃん
考えすぎやな  、
考えんのやめとこ、と椅子から立ちあがる。


ちょうどマネージャーからの
メールが入っていたから、

場所近いしな、と迎えを断る。









楽屋に着く。
やっぱり仕事場っていいな、
メンバーいるんっていいな、

と思わされた 。


変に昨日考えたことを
意識してしまうのがおかしく思えてしまうくらい、
いつも通りだった。

でも。
しげ
神ちゃーん!!!
神ちゃん
のわっ!?
とくんっ   。
いきなり飛びつかれる。

変な声で驚いてしまった。

今起きたことは、普通だ。
これは、いつもなら、普通。

だが、変に病の仮定をしてしまっている今、
心臓の鼓動が近くで聞こえてしまった。

ドキドキしてしまった。

しげ相手に?ない、ないない。
しげ
神ちゃーん?聞いとったぁ?
淳太
最近ぼーっとすること多いけど
大丈夫?神ちゃん、
神ちゃん
あ、ごめんごめん、大丈夫。
完全にフリーズしていた。

考えすぎて、止まっていた。
神ちゃん
ぉ゙ぇ   、ぐほ  ぇ  、ぇ゙  っ  、
は、?い、今、?
神ちゃん
御免  、御手洗  行ってくる  、!
ちょっと待って  、!
腕を掴まれる。
神ちゃん
へ ぁ   、ぇ  、ちょ  っ  、
無言で背中をさすられる。

至近距離、
そっちの方に反応して吐きそうになる。

でも、おかげで痛みは少し減り、
喉が軽く押し上げられる感覚。

窒息しかけてむせる。
神ちゃん
ごほ  ぇ  、っ゙ん  、っ゙ぉぇ  、
背中を軽く叩かれても、吐き気は止まらない。
神ちゃん
嘔吐感止まらへん   、御免やん ?  退いて  、
そういうと、退いてくれた。

廊下のトイレの個室で吐き出す。


白い花弁がサラサラと口から出ていく。

息を吐くと、前に向かって花吹雪が舞う。

露はだんだん薄れ、花弁が乾いた。



この花、見覚えがある。

この間、単体で1つ吐き出した物。

イベリス、花言葉は『心を引きつける』。

誰に、何に引き付けられているかは
検討がつかない。

だが、さっきの騒動で察するに、
メンバー全員に引きつけられている。

頭痛は目眩になり、体がふらつく。

力が抜けて、倒れ込みそうだ。










目が覚める。
ん、?覚める、?
俺は、楽屋に寝かされていた。

収録時間の12時はとっくに回っている。
神ちゃん
ぇ  -  と  、俺  、どしたん  ?
囲まれているみんなに聞く。

不安そうな顔。
倒れてんで?大丈夫か  神ちゃん  。
神ちゃん
うん  、ちょっと疲れただけ  。
それより、囲まないで、吐きそうやから。
神ちゃん
ぅ゙  、ぉ゙ぇ  、げふ  っ  、
濵ちゃん
大丈夫?神ちゃん、安静にし、
じゃあまず離れてや、なんて言えるはずないやん。

周りを囲まれているから、
吐くに吐けず困っている。
照史
これに吐きや  ?恥ずかしがらんでも  、見とかんから大丈夫やで  、
小さなバケツを渡される。

即座に吐く。

花を。

早すぎて、皆に見られてしまっていた。

不覚、一生の不覚や。


どう思われるだろう?

興味を持たれるか、不信感を持たれるか。
流星
はぇ  、‥  は  、花  ‥
淳太
花  、やんな  、これ  。
食用の奴  、‥  ?
消化して、こんな綺麗な形で出てくることは
まず無い、なんて思ってながらも、
のんちゃんは和ませるために言ってくれた。

多様な驚き方。
しげ
言い伝えの   、花吐き病   、?
濵ちゃん
なんやそれ?
花吐きに、言い伝え、?
しげ
いや、おとぎ話やな、花吐き姫。
淳太
花吐き姫、知らんの?
うん、知らん知らん。

なんで知ってん?レベルやで、
照史
恋をして苦しんだ姫が、
王子様に花吐いてるのを
見られるやつやんな?
元から本読みが好きなB.A.D.の2人、
なんかで聞いてんな、と言ってるしげが、
話を知っているらしい。

ちなみに俺は、全く知らん。

姫が花吐きて、どんな話よ、
淳太
おとぎ話では、
どーにかして治してんな?
俺のも、治るんかな?
照史
そうそう、終わり方が数個あるんよ。
おとぎ話でそれトゥルーエンド有りって、あんま無くない?
しげ
なぁ、治るか実践してみぃひん?
花吐き病が治るなら、いくらでも喜んで、

と言いかけた。



ところに。





チュッ
神ちゃん
っ   、ん    !!!??!??





しげからの、キス 。


喉奥が熱く、痛くなる 。
神ちゃん
ぉ゙  、っ゙んへ  、ごへ  、
花を吐き出してしまい、思わず手で受け止める。
黒い、ユリ。

花言葉は、『呪い』、らしい。

この場合、「呪いが解ける」。
しげ
クロユリや!治ったっぽいで?
照史
え、そのendにしたん、?
キスend、?

どういう終わり方なんやろ、
しげ
1ミリでも好きやったら治んねんて、
神ちゃん
1ミリ、?
淳太
トゥルーエンドやな、
神ちゃん
結局どうなるん、?
照史
王子様と姫は、それきり会わない。
しげ
まぁ、男同士やと
これが一番マシやな、思て。
そう、なん、?
妙な空気が流れて、
その日は他の都合もあわさり、バラシになってん。









その日以来、
花を吐く苦しみを味わうことは無くなった。

みんなとも、普通のメンバーに戻った。


だけど、これだけが気がかりで。

絵本、買ってんな、気になって。


アイビー、『永遠の愛』を吐く方法もあった。


同じく、キス系だが、告白成功からのキスらしい。




しげ、俺の事、好きやんな、?

あのキスから、しげが忘れられへんねん。

俺も、好きになってもうてん。


アイビーを吐いたら、
永遠に離れられない呪いにかかれんねん、

なのに、なんで吐かせんかったん、?


しげは、俺の気持ちを大切にしてくれた。

これまでも、これからのことも考えて、
普通のメンバーでいることを選んだ。

でも。





俺がそんな素敵な呪いに
かかりたくないとでも思ったん、?


1ミリ、なんて言って。
トゥルーエンドを遂行して。



こんなものなら、

呪いの病なんて、解けなくて良かったのに。



なんてな、花吐きがなければ何も出来ない、

卑屈で奥手で面倒くさい自分に、


また、苛ついてしまった。
















end

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