学祭当日。
今日は体育館で、クラス演劇が上演される。
私はステージ袖で、シンデレラの着替えを手伝うことになっている。
私と茉莉は、ライバル宣言のあとは一言も口を聞いていない。
仕方のないことだけど、でも、友達なのは変わらないって思ってる。
あ、始まった。頑張らなきゃ!
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拓海は王子様そのものでカッコよくて、シンデレラ姿の茉莉も可愛くて。
キラキラな二人を見ていると、自分に自信がなくなってしまう。
どっちも演技は完璧。
いよいよ、最後のシーンだ。
ステージ袖に飛び込んだ茉莉に駆け寄る。
下働きの衣装に着替えた茉莉は、私をステージに押しやった。
ステージ上には、ガラスの靴を手にシンデレラを探す人々。
手を引かれて、私は茉莉とともにステージに飛び出した。
制服姿の私の登場に、観客席からどよめきが起きる。
台本にない台詞に、ステージ上を戸惑いが包む。
でも、
王子様姿の拓海は、私に歩み寄った。
これも、台本にない台詞。
ううん、この言葉って、告白ーー?
観客席から、歓声が響く。
全校生徒の前での告白。
とても緊張したけれど、
ドレスは身に付けていないけれど、
私は、お姫様になれた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!