第12話

ひとときのシンデレラ
296
2021/01/12 06:00
学祭当日。
今日は体育館で、クラス演劇が上演される。
私はステージ袖で、シンデレラの着替えを手伝うことになっている。
柳瀬茉莉(やなせまり)
柳瀬茉莉(やなせまり)
……
(なまえ)
あなた
……
私と茉莉は、ライバル宣言のあとは一言も口を聞いていない。
仕方のないことだけど、でも、友達なのは変わらないって思ってる。
同級生
同級生
これから、3年A組のクラス演劇『シンデレラ』を上演します
あ、始まった。頑張らなきゃ!
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須藤拓海(すどうたくみ)
須藤拓海(すどうたくみ)
私と踊ってくれませんか?
柳瀬茉莉(やなせまり)
柳瀬茉莉(やなせまり)
はい、王子様
(なまえ)
あなた
(やっぱり、お似合いの二人…)
拓海は王子様そのものでカッコよくて、シンデレラ姿の茉莉も可愛くて。
キラキラな二人を見ていると、自分に自信がなくなってしまう。
柳瀬茉莉(やなせまり)
柳瀬茉莉(やなせまり)
ああ、十二時の鐘が鳴った!
王子様、さようなら!
須藤拓海(すどうたくみ)
須藤拓海(すどうたくみ)
待ってください、美しい人!
どっちも演技は完璧。
いよいよ、最後のシーンだ。
ステージ袖に飛び込んだ茉莉に駆け寄る。
(なまえ)
あなた
茉莉、ドレス脱ぐの手伝う!
柳瀬茉莉(やなせまり)
柳瀬茉莉(やなせまり)
…あなたの下の名前
(なまえ)
あなた
うん?
柳瀬茉莉(やなせまり)
柳瀬茉莉(やなせまり)
私、拓海にフラれた
(なまえ)
あなた
え?
柳瀬茉莉(やなせまり)
柳瀬茉莉(やなせまり)
ずっと好きな人がいるんだってさ
柳瀬茉莉(やなせまり)
柳瀬茉莉(やなせまり)
…私、もう、吹っ切れたから
柳瀬茉莉(やなせまり)
柳瀬茉莉(やなせまり)
だから、
下働きの衣装に着替えた茉莉は、私をステージに押しやった。
ステージ上には、ガラスの靴を手にシンデレラを探す人々。
柳瀬茉莉(やなせまり)
柳瀬茉莉(やなせまり)
あなたの下の名前も拓海の気持ち、ちゃんと知って!
(なまえ)
あなた
えぇっ!
手を引かれて、私は茉莉とともにステージに飛び出した。
制服姿の私の登場に、観客席からどよめきが起きる。
柳瀬茉莉(やなせまり)
柳瀬茉莉(やなせまり)
王子様!
須藤拓海(すどうたくみ)
須藤拓海(すどうたくみ)
えっ、あなたの下の名前…?
柳瀬茉莉(やなせまり)
柳瀬茉莉(やなせまり)
あなたのお姫様は、この人ではありませんか?
台本にない台詞に、ステージ上を戸惑いが包む。
でも、
須藤拓海(すどうたくみ)
須藤拓海(すどうたくみ)
はい、そうです
王子様姿の拓海は、私に歩み寄った。
須藤拓海(すどうたくみ)
須藤拓海(すどうたくみ)
私はずっと、子どもの頃からずっと、あなたが好きでした
これも、台本にない台詞。
ううん、この言葉って、告白ーー?
須藤拓海(すどうたくみ)
須藤拓海(すどうたくみ)
あなたの王子様になりたいって、長い間、思い続けていました
(なまえ)
あなた
拓海ーー
須藤拓海(すどうたくみ)
須藤拓海(すどうたくみ)
あなたの名字あなたの下の名前さん、このガラスの靴を受け取ってもらえませんか?
(なまえ)
あなた
……はい
ありがとう、拓海
観客席から、歓声が響く。
全校生徒の前での告白。
とても緊張したけれど、
ドレスは身に付けていないけれど、
私は、お姫様になれた。

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