衣装作りが始まった。
私の担当はシンデレラのドレス。
大まかな縫い合わせはミシンで済ませ、今は手縫いで全体にフリルを付けている。
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あれは幼稚園の頃。
山の中で遊んでいた私と拓海は、道に迷ってしまった。
「誰かが助けに来るまで、ここにいようよ」
今よりずっと頼りなかった拓海は、そう言って座り込んだ。
「拓海、大丈夫だよ。ちゃんと家に着くから。だから歩こう」
私はそう拓海をなだめて、笑顔を崩さず歩き続けた。
「カッコいいね」
拓海が感心したように言う。
「そうでしょ。私、ヒーローだから。お姫様になんて、ならないんだよ」
私は強がりを言った。
二人、手を繋いで山を下りた。
すぐに両親が私たちを見つけてくれて、大事にはならなかった。
拓海はずっとこの出来事を覚えていて、この間も言われた。
拓海は私のことを、カッコいい幼なじみとして、今も尊敬してくれる。
嬉しさ半分、
切なさ、半分。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。