いろんなことを調べたり、
新しいことを知ったり、
そうやって知識を増やしていくのが
元々おれは好きなんだけど、
『ねぇ、知ってる?? 今日授業で出てきた…』
「え、? お城?の話?」
たぶんたいして興味がなくても、
「へぇ、そうなんだ!!」って
目をおっきくして、
「やぶくんって、ほんとに物知りだよね」
って、笑ってくれるから、
話すきっかけと、話し続ける理由と、
話が終わらない方法を、
……いつも探してる
『やぶくん、帰んなくていいの?塾、あるんでしょ?』
「ん?? んーまぁ……でも、もう少し大丈夫、 」
『てかなんで図書委員になったの?』
「……別になりたかったわけじゃないよ、」
そうなんだ。
けど、おれは、あなたちゃんが、
図書委員でよかったな、
放課後の図書室なんて、
ざっと数えられるくらいしか人がいないから
二人きり、みたいなもの
「そういえば……」
『……、』
「おーい、聞いてる?」
「え、あ……ごめん、」
あなたちゃんの目線の先には
クラスメイトの女の子達とたかき。
たぶん、あなたちゃんは
たかきのことが好きなんだと思う。
もやもやしたまま、
塾へ向かった。
面白くもない先生の話がやっと終わって
ふと、携帯を見ると1つのメールが
あなたちゃんだ、
『今日、塾終わったら会える??』
「うん、会えるよ」
返信すると既読がすぐついて、
『やぶくん家の近くのマックで待ってる』
嬉しくて、いつもより早い時間でマックについた。
テーブルに頬杖をついて
遠くを眺めているあなたちゃん。
「ごめん、遅くなった、」
気まづくて、下を向くと
冷たくてしなしなになっているポテト
そんなに待っててくれたのかな、
そう思ってまた嬉しくなる。
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『あのね、私…』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。