___あなたside
そう言い残し、ピタリと凍りつく皆に
背を向け踵を返す。
すると手首を誰かに掴まれ、後ろを振り向いた。
なんで?こっちが聞きたい。
なんでだろうね。自分でもよく分かんないんだ。
手首を掴む力が強くなるギシギシと
ワタシにしか聞こえない音が鳴る。
痛みに目を細めるが、蘭を睨みつける。
身体が小刻みに震え、だんだん声も震えてくる。
目の前はかすみ、頬に何かが流れる。
でもなんで今自分がこんな事言ってるのか
全くもって分からない。
ずっと一人だった。
イザナが居なくなってからもう9年くらい経つと思う。
その間ずっと我慢して、ずっと一人で頑張った。
______でもその先にワタシが求めたものは無かった.
その現実を口にした時には
目の前は涙で真っ白になってて、
蘭も…誰の表情も見えなかった。
気持ち悪くて…怖くて…苦しくて…
なんてもう言えなかった。
言葉が震えてくその先は言えず
悲痛な声と嗚咽しか出なかった。
足の力は抜けてその場に座り込もうとすると
蘭の手が腰に回ってきて、
でもワタシはそれを拒絶して壁に
もたれ掛かりながら座り込んだ。
頭に流れてくる最悪な記憶で
体から込み上げてくる吐き気に、
口元を抑えながら俯く。
死にたいのに、怖くて、死ねなくて、
でも生きてても苦しいことばかりだった。
_____頑張った先には苦しみしか無かった.
幸せを求めたのにそれは離れていく一方だった。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!