第47話

ヒトリ
3,358
2021/10/02 13:16






___あなたside



あなた
もうワタシ、居場所ないね。
あなた
一時間後には出てくよ



そう言い残し、ピタリと凍りつく皆に
背を向け踵を返す。


すると手首を誰かに掴まれ、後ろを振り向いた。



蘭
なんで?


なんで?こっちが聞きたい。

なんでだろうね。自分でもよく分かんないんだ。


あなた
…さあ?
蘭
別にオレらはお前を追い出そうとしてるわけじゃない。
あなた
ワタシは追い出されるんじゃくて
出ていこうとしてるんだよ。




手首を掴む力が強くなるギシギシと
ワタシにしか聞こえない音が鳴る。


痛みに目を細めるが、蘭を睨みつける。




あなた
…見て欲しかった
あなた
皆の理想になりたかった
あなた
優しい人になりたかった
蘭
オレらはお前のことちゃんと見てる。
それにお前は優しすぎな。



身体が小刻みに震え、だんだん声も震えてくる。
目の前はかすみ、頬に何かが流れる。


でもなんで今自分がこんな事言ってるのか
全くもって分からない。



あなた
そしたらきっと今頃殺されてたのに…。
もう死んで楽になってたのに
あなた
なんで今更…ワタシの事さらったの?
蘭
何度も言ってんだろ。
オマエを絶対に幸せにするって
あなた
じゃあなんで…
あなた
なんで…ワタシを一人にしたの?





ずっと一人だった。

イザナが居なくなってからもう9年くらい経つと思う。

その間ずっと我慢して、ずっと一人で頑張った。







______でもその先にワタシが求めたものは無かった.



あなた
あの日の事が頭から離れなくて、
もう耐えれなくなって、沢山ズルして
あなた
それでもお腹の中の気持ち悪いものは
消えなくて、全部が嫌になって…
あなた
もう…幸せになんてなれない




その現実を口にした時には

目の前は涙で真っ白になってて、



蘭も…誰の表情も見えなかった。





あなた
梵天に来てからは楽しくて、幸せを感じるようになって…
あなた
でもやっぱり離れない物があって、
それがこびり付いて離れなくて、





気持ち悪くて…怖くて…苦しくて…



なんてもう言えなかった。



言葉が震えてくその先は言えず
悲痛な声と嗚咽しか出なかった。



足の力は抜けてその場に座り込もうとすると
蘭の手が腰に回ってきて、


でもワタシはそれを拒絶して壁に

もたれ掛かりながら座り込んだ。




あなた
早く死んでしまいたい。
楽になりたい。全部忘れたい。


頭に流れてくる最悪な記憶で
体から込み上げてくる吐き気に、

口元を抑えながら俯く。


あなた
大…きらい…
あなた
イザナも…梵天も…この世界も全部…



死にたいのに、怖くて、死ねなくて、
でも生きてても苦しいことばかりだった。



_____頑張った先には苦しみしか無かった.








幸せを求めたのにそれは離れていく一方だった。



NEXTchapter↪︎

プリ小説オーディオドラマ