___蘭side
仕事から普段より早く上がり、
自室のソファーにくつろぎテレビをつける。
そこに『行方不明の女子高生』と大きく
デロップが掲げられている。
呼び慣れた名前と見慣れた顔が画面に移る。
彼女の情報をニュースキャスターが淡々と
読み上げていく。その中には偽りもある。
まもなくすると彼女の母親と友人が映る。
『この親、まだ生きてたのか。』
闇金に追われる身だからそろそろ死んでると
思ったが、思ったよりしぶといらしい。
まあ遅かれ早かれ死ぬか。
辛そうな演技をし、娘想いの母を演じる女。
知ったような口であなたの事をペラペラ語る
クラスメイト達。
『くだらねえ』
このメディアにあなたの虐待とイジメの
証拠を今にも言ってやりたくなったが、
今となっちゃコイツらとあなたは関係ない。
1つたりともあなたを知らせる気にはならない。
一枚壁を挟んだ向こうの入口からあなたの声がする。
オレはテレビを消し、彼女の呼び掛けに返事をした。
切れたクスリはちゃんと貰いに行って、
彼女の病気の事を知って、
もう彼女一人で重い病気を背負ってない。
周りと自分の為に貼り付けた笑みもない。
そこにはごく自然で、他より少し多才な
如月あなたという人間が居る。
NEXTchapter↪︎
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!