『ねぇ、俺と一緒に死んでよ』
・・・──ああ、なんて事を言ってしまったんだ。
ぽろりと口から出た本音はもう誤魔化すことは出来なくて、目の前の彼女は目をぱちりと開けたまま微動だにしない。
いままで嫉妬深い俺を受け入れてくれた彼女でもさすがに、これはヤバいだろ。
頭のなかでは"どうしよう、どうしよう"この5文字でいっぱいな状態。
これで引かれて「別れよ」なんて言われたらほんとに死ねる。そのときは彼女を道連れにでもしようか。
そんな妄想を頭の端で浮かべ 今からでも誤魔化そうと決意した
「な、なーんて『ほんと?』 え?」
『ホントに私と心中してくれるの?一緒に死んでくれる?そんなの素敵じゃない、とても嬉しくてもう最高』
目の前の彼女は今までで見た事のないような高揚振りを見せていた。頬は火照り、目は潤んでいて、恍惚とした表情を浮かべている
ゴクリ、と自身の喉仏が上下したのが分かった
開かれた口から言葉を紡ごうとした時
急な衝撃が頭にはしった。
「ッ、いっったぁ」
『なーんてね、もう死のうなんて言わないでよ』
目の前の彼女はいつもの顔で佇んでいた。
自分が余程面倒くさくて、嫉妬深い自覚はある
しかし、それを邪険に扱うことなく溜息もらさず、受け入れてくれる時の顔。
彼女は俺の言ってしまえば女神様のようなもので、穢い俺には似合わないと前言った時、彼女はさっきと同じようにら俺に拳骨をくらました。だけど、その後彼女は自分のほうが醜いよと笑いながら言った。
─そんなわけないのに。
「ん、分かった」
『よしっ!じゃあジュースとってくるね』
「ありがと」
彼女が隣からいなくなっただけでも冷たさを感じる自分はもう末期だろうか。はぁ、息をついて思い出すのはさっきの彼女だ。
「…ッ」
彼女の恍惚とした表情を思い出しただけで、首筋から背中にかけてゾクゾクとした何かがかけあがって、俺の口角はあがってしまうのだ
あーあ、ほんと可愛くて綺麗で俺の唯一な彼女
『あせった〜、思ってることバレたかと思っちゃった。あ、ジュース見っけ』
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。