そらるside
走る。
保健室までがむしゃらに走る。
その言葉を聞いたとき、顔から血の気がひいた。
隣でまふまふも必死に走っている。
なんで、倒れたのか。
なんで、気づくことができなかったのか。
そんな、情けない後悔や疑問が頭の中をぐるぐると巡る。
保健室に着いた。
保健室の戸を勢いよく開ける。
そこにいたのは
天月と
静かに眠っているあなた。
まふまふが天月の方まで走って行き、
天月にすがるように聞く。
そう言ってヘナヘナと崩れ落ちるまふまふ。
だけど、問題はそこじゃない。
そう言って天月を鋭い目付きで見る。
また鋭い目付きに戻り天月を見据える。
深々と頭を下げて謝ってくる天月。
天月はそう言って、頭を上げる。
そして、しっかりとした決意が宿った目で
こちらを見てくる。
まふまふは、状況が飲み込めずあたふたとしている。
そんな間も天月の目は俺をしっかりと見据えている。
あぁ、こういう奴が物語のヒーローなんだろうな…と思った。
そう言う、天月の笑顔はとても輝いていた。
そんな天月の呟きは俺の耳には届いていなかった。
そんな、疑問が漂う保健室の窓辺には
一匹の狸と、子犬が座っていた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。