まふまふside
走る。
走って家に帰る。
『距離を置こう?』
本当はこんな事言いたくなかった。
あんないるかも分からないストーカーのせいで距離を置くなんて……
嫌悪感で吐き気がする。
でも………
もし、僕の事が好きでストーキングしてるなら………
彼女のあなたに逆上する可能性もあるえる…よね。
そんな事を考えていると、
走ったからだろうか。
いつの間にか家についていた。
鍵を開けて家に入り、自室へと行く。
と同時に涙が溢れ出てくる。
いきなり出てきた涙に戸惑ってはみるが、
僕はこの涙の正体を知っている。
『不安』だ。
思わず本心が口に出る。
一度口に出してしまうと
もう、止まれない。
一人、部屋でただただ泣き叫ぶ。
叫んでも、誰にも届くはずないのに。
それでも、助けを求めて
ひたすらに泣き叫ぶ。
そんな事をしていると
ふとある事に気がついた。
毎日毎日ストーカーからの紙が入っているポスト。
もしかしたら今日は、入ってないかもしれない。
………入ってなかったらまた、あなたと仲良くしてもいいよね……?
淡い期待を抱きながら、ポストへと向かう。
先程までは、紙が入ってなかったら…
などと考えていたが、
いざポストを目の前にすると、
不安とか恐怖とか……そういうものが一気に押し寄せてきた。
一息ついてからポストを開ける。
…………しかしそこには店の広告ばかりが入っていて、
毎日入っていた紙は入っていなかった。
思わず声が漏れる。
まさか…本当に入ってないなんて……
と呟きその場にへたり込む。
ストーカー………僕の事諦めたのかな?
それとも………最初からストーカーなんていなくて、
全部僕の妄想だったとか………?
色々な考えが押し寄せてくるが、
今はそんな事どうでもいい。
だって、これであなたと仲良くしても
心配する要素はなくなった。
またあなたと…笑い会える……!
僕はただ一人、喜びに浸っていた。
この後、そんな考えは甘かったと思い知らされる事も知らずに。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!