そらるside
“ばいばい”
そう言うとあなたは
走り去っていってしまった。
と、まふまふはずっと一人で呟いている。
あなたを守る為には俺達があなたに恋することは許されない。
これ以上あなたに恋心を持ってはいけないんだ。
俺の疑問は誰にも答えてもらえないまま
消えていった。
俺が校舎に入ると同時に先生に捕まった。
そこには山積みになった大量の資料。
先生にそう言われ、俺は資料を生徒会室に
運び始めた。
だけど、仕事中も考えるのはあなたの事。
本当にこのままでいいのか?
俺の判断はあっているのか?
そんな事を考えながら歩いていたからだろう。
途中、何かにつまずいて派手に転んでしまった。
はぁ……とため息をつきながら
保健室へ向かう。
困った。俺は、器用ではないから
自分で応急処置をできる自信もない。
そんなときだった。
先程まで閉まっていたベッドのカーテンが
開けられ、あなたが飛び出してきた。
あなたは、俺の傷を見るなり
俺に駆け寄って心配そうな瞳で見つめてきた。
さすがの俺でも驚きを隠せない。
そんな俺の様子もお構いなしに
あなたは聞いてくる。
まるで、見ていたかのようにズバズバと当ててくる。
驚いてしまった。
あなたは、そんなに俺達の事を大事に思っていてくれていたんだな……と。
俺達は、あなたに酷いことばかり
してきたのに……
その後の俺は、ただあなたを見つめていることしか
できなかった。
じっとあなただけを見つめていると
あなたが、小さく笑った。
その顔は嬉しさを噛み締めているようで
多分、俺が見てきたあなたの笑顔の中で一番
綺麗だった。
思わず胸が高鳴る。
そう思いながら、無意識にあなたの
背に手を回す。
と、同時に手当てが終わったらしい。
あなたは俺からパッと離れてしまった。
あなたと別れを告げ、一人廊下を歩く。
もう少しであなたを抱き締めているところだった。
その言葉が脳裏に響く。
多分、俺の顔は今、赤くなっているだろう。
久しぶりのあなたとの会話だけで
これだけ胸が高鳴るのだから。
今日のことで、それに気付くことができた。
そんな、俺の決意は
また、昔のようになれるかもしれない
という、身勝手な期待と共に心に染み付いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!