そらるside
思いきって聞いてみる。
あからさまに、慌てるあなたとまふ。
白い目であなたを見てみる。
赤面しながらそう答えるあなた。
……可愛い…。
そして、この中で唯一あなたに告白した天月君が『いる』という答えに反応するのは妥当な訳で。
天月君は、放心状態になっている。
まぁ、そうなるか。
好きな女に好きな人がいるとなったら
誰だって放心するし、緊張する。
それは、俺も例外ではないわけで。
俺の心臓は、バクバクと脈を打っていた。
うらた君が随分と極端な質問をする。
………!!
この中にいるって………
嫌でも少し期待してしまう自分がいる。
もしかしたら、あなたの好きな人は俺なんじゃないかと。
そんな淡い期待を振り払い我に帰る。
と、同時に先程まで放心状態だった天月君が喋り始めた。
露骨な話題そらしだ。
恐らく、あなたが赤面しながら好きな人について話す姿に耐えきれなくなったのだろう。
その好きな人は自分ではない可能性が高いから。
ギャーギャーと騒がしく言い争いをする
うらた君達をまふが止めに入る。
誰が送るかくらいでうるさいな……。
え?
++++++++++++++++++++++
まふまふ達が見えなくなる。
二人で歩きだす。
これでもかというほど赤面をしながら好きな人の話をするあなたの姿は、
自分で話をふっておきながら、
見たくないと思ってしまう。
あなたに背を向けて歩きだす。
横断歩道を渡り、自分の家に向かう。
後ろからあなたの声が聞こえる。
…………あなたの声??
振り向くと、反対側の道には走ってこちらへ向かってくるあなたの姿。
な、んで……。
信号が青になり、あなたがこちらの道へ走ってくる。
そこに、
信号を無視したトラックが突進してきた。
考える暇もなく、
俺は、
突進してきたトラックの前に飛び出し、
あなたを突き飛ばした。
………あ。これ、死ぬな。
でも、あなたが無事なら……
良かっ…た…………
そこで、俺は意識を離した。
最後に、大好きな人の悲しそうな声を聞きながら。
涙でボロボロになった顔で、
もう返事をしないそらるさんにそう伝える。
ずっと、ずっと、大好きです……。
今までも、これからも。
そんな私の声は突如として降り始めた雨に、
かき消されてしまいました。
そらる BAT END2
『さようなら愛しい人』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!