第10話

どんな情報も売る情報屋
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2021/08/21 15:15
「もう話は終わりでしょう?そろそろ遅めの昼食を作らなきゃいけないから、帰ってもらえると嬉しいのだけど」
真央のその言葉で、長くお邪魔してしまったことに気付いた5人は、謝罪を述べて真央の家を後にした。帰る時に真央は、

「そんなに情報が聞きたいなら、情報屋を紹介するよ
すぐ近くにあるから」

と言われて教えてもらった”情報屋”へと向かう事になった。
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
あの曲がり角を左に曲がって……
来栖 梓
来栖 梓
その先を真っ直ぐ行って……
蓬莱 奏珠
蓬莱 奏珠
2番目の路地裏の突き当たり……
彼方 時雨
彼方 時雨
そこに古びた建物がある……
八雲 未来
八雲 未来
それが情報屋、絶対に3回ノックして扉を開ける……
真央が言っていた事を復唱するように言う5人。
最後の「絶対に3回ノックして扉を開ける」、という部分が理解出来ていないのだ。
まぁ、その辺はその”情報屋”の店主に聞くことにしよう。

真央に言われた道を通って、情報屋へ向かう5人だった。
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────カランカラーン
???
……おや?
???
おやおや、お客様みたいですね
来栖 梓
来栖 梓
…えっ、2人?
???
あぁ、いえ、僕は客…と言うより、友人ですよ
もう帰りますので、お気になさらず
茅根 綴
茅根 綴
僕が店主です、店主の茅根 綴。
以後、お見知り置きを。
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
あ、ど、どうも…?
…そちらの、方は…?
???
…一応、自己紹介はしておきましょうか
いずれ会うことになる方々ですしね……
その言葉に5人が首を傾げると、その”少女”は氷音達を見た。
黄蘗 芽衣
黄蘗 芽衣
僕は芽衣。黄蘗 芽衣と申します。
あなたがたの事は姉や彼女からよく聞いてますよ
とても面白い方々だと
芽衣、と名乗る少女は、敵意などはなさげにそう言った。

しかし氷音達は、「璃那」と言う名前が出た途端芽衣を敵視し、氷音に至っては睨みつける始末。芽衣は「随分嫌われてしまったようですね」とため息をついた。
黄蘗 芽衣
黄蘗 芽衣
それでは綴、璃那の伝言は伝えましたので、僕はこれで。
茅根 綴
茅根 綴
はい。またいずれお越しくださいと、お伝えくださいね
黄蘗 芽衣
黄蘗 芽衣
えぇ。ではまたいずれ。
芽衣はとことこと出口へと向かい、扉を開けて店を出ていった。
茅根 綴
茅根 綴
それで、小さなお客様たち。
一体どのようなご要件でしょうか?
僕も知らないような情報提供?
もしくは情報を”買いたい”とご要望ですか?
彼方 時雨
彼方 時雨
…情報を買わせて欲しいんですけど、いくらなんですか?
茅根 綴
茅根 綴
僕がいただくのはお金ではありません。
僕がその時欲しいもの、がほとんどですが……
その方の命消費者さまの人生と同格の価値のものがあれば、そちらをいただくことにしております
蓬莱 奏珠
蓬莱 奏珠
その方の命?
それって一体どのくらいの価値のもの……
茅根 綴
茅根 綴
……人の価値、というのは、思ったより低いものです。
そこにある金の壺よりも、低いものだったりもします
しかしそれは人による。
どんな人生を送るかよって、それは変わってしまうものですよ
八雲 未来
八雲 未来
……そのー、”命より価値のあるもの”って何?
茅根 綴
茅根 綴
基本的には、その方の”大切なもの”が、その方の命よりも、価値のあるものです
その方にとっての大切なものは、その方の”情報”を何よりも見せてくれる優れものですから
「やっぱり情報屋なんだなぁ」と思いながら5人が綴を見ていると、「そうだ、例えば……」と綴は話を始めた。
茅根 綴
茅根 綴
僕のこの白い目は、とある方に情報を提供する代わりに大切なコレクションの中からひとつ頂いたものですよ
白い目は憧れでしたし、何しろ綺麗で、情報を沢山持っていて、魅力的でしたから
茅根 綴
茅根 綴
それと、ここに置いてあるこの小さな瓶。この中には血が入ってるんですよ。とある方のね。
その方は情報をたくさん見ているような宝物も、僕が欲しいものも持っていなかったもので。
血を少々頂いて、情報を貰うことにしたんです
周りに置いてあるもの全ての説明をしようとする綴を止めて、本題に入ろうとする。このままでは一生話は終わりそうになかったからだ。
茅根 綴
茅根 綴
申し訳ございません、つい話しすぎましたね……
それで、どんな情報をお求めで?
過去のことから現在のこと、未来のことまでどんな情報もお取り寄せいたします
冗談なのか本気なのか、そう言う綴。なんの情報が欲しい、と言う訳ではなく、”紹介されたから来た”という場合はどうすればいいのか。とりあえず、そのまま言ってみることにした。
来栖 梓
来栖 梓
えっ……と、紹介されたんです
漣さんっていう人に……
梓がそう言うと、綴は少し驚いたような顔をして、そうですか、という顔をした。
茅根 綴
茅根 綴
おや、真央ちゃんの紹介ですか…それは困りましたね…
彼女が教えてあげて、と言っている情報が手に取るようにわかってしまいます
「おやおや、」というふうにくす、と笑った綴。
「先に対価の話をしましょうか」と、呟いた。
茅根 綴
茅根 綴
僕が今欲しいもの…は、どうやらお持ちでない様子。あなたがたのうちの誰かの宝物を、頂きたいのですが。
ありますでしょう?命と同じくらい大切なもの。
頂けないというのなら血ですね。小瓶いっぱいの血を頂戴します
にこにこ、と笑いながらそう告げる綴を見て、氷音は、宝物のブレスレットを見た。病弱でなかなか会えない姉がくれた大切なもの。
それを見ながら、考えた。

これなら、情報も十分にくれるのではないか、と。
茅根 綴
茅根 綴
まぁそれを決めるのは、情報を聞いてからでもよろしいですよ。
じゃあまず最初に……


”彼女達の過去”、でもお話致しましょうか?
綴のその言葉の直後、おそら3時を告げているのであろう鐘の音が鳴った。

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