第9話

都市伝説調査クラブの”元依頼人”
36
2021/08/19 07:44
次の日、氷音は自分のメイドの違和感を時雨たちに話した。
八雲 未来
八雲 未来
…姿が全く変わらないメイド…ねぇ…
来栖 梓
来栖 梓
そもそも僕らにはメイドなんて居ないからよくわかんないんだけど
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
まぁ……すごい身近な人が、姿が全く変わらなかったら、って考えて
「そんな人いるわけが無いだろ」と思いながら考えていると、奏珠が「あ?!」と大声を出した。
蓬莱 奏珠
蓬莱 奏珠
居た!!全く姿が変わらない人!!
彼方 時雨
彼方 時雨
は?!だ、誰?!
蓬莱 奏珠
蓬莱 奏珠
天希のお母さん!私らが小さい時からずっとあんな感じやん!
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
確かにめちゃくちゃ若いよな
…今でもまだ高校生なんやないかなってくらい若いし
氷音がそう言うと、全員が「まさか、」という顔をした。
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
…とりあえず、行ってみる?
氷音のその一言で、5人は天希の家に行くことになった。
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ピンポーン……
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……出てきてくれっかな…
来栖 梓
来栖 梓
天希が急に行方不明になって、もしかしたらすごい病んでるってことも……
と、5人が話をしていると、インターホンから声が聞こえてきた。
「……はい」
彼方 時雨
彼方 時雨
…あ、えっと、天希のお母さん…ですか?
「…そうですけど…」
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
ちょっと聞きたいことがあって…少しお時間、よろしいですか?
「…ちょっと、お待ちください」
そう言葉を最後に音が聞こえなくなったインターホン。
一軒家の家の前に5人がずっとたむろしているのもあまりいいものでは無い。早く出てきてくれると助かるのだが……と、氷音が思っていると、ガチャ、と家のドアが開かれた。
???
…天希のお友達……?
……高校生のような、女性が家から出てきた。
身長も顔立ちも、氷音達と同じくらい若い女性。
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
…あ、そ、そうです
ちょっと聞きたいことが……
???
……天希のことについては、答えるつもりはありませんが
氷音の言葉に食い気味でそう言う女性。
その目はとても冷たく、まるで死んでいるかのような目だった。
来栖 梓
来栖 梓
えっと……と、とりあえずお話したいことと、聞きたいことがあるんですけど……
???
……どうぞ、上がってください
女性はそう言って、氷音達を家に招き入れた。
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蓬莱 奏珠
蓬莱 奏珠
…わざわざ飲み物まで出してもらっちゃって、ほんとすみません…
???
……天希のお友達ですから、構いませんよ
家に氷音達を招き入れた女性は、氷音達のために飲み物を出してくれた。
漣 真央
漣 真央
…まず自己紹介からしますね
私は真央。漣 真央です
どうぞよろしくお願いします
ぺこり、と頭を下げてそう言う真央。
氷音達も自己紹介をしようとしたが、「天希から聞いてますので」と言われてしまった。
漣 真央
漣 真央
…それで、聞きたいことと話したいこととは一体?
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……天希の事なんですけど…
行方不明、になってるじゃないですか
氷音がそう言うと、真央は少し怪訝そうな顔をした。
漣 真央
漣 真央
……そうですね、それがどうかしました?
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……天希は、狐目屋敷にいるんです
漣 真央
漣 真央
……え…”あの人たち”の所に?
「え?」というような顔で真央を見た5人。真央は、「しまった」という顔をしていた。
彼方 時雨
彼方 時雨
…何かご存知なんですか?
漣 真央
漣 真央
…”黄蘗先輩達”の所でしょう?狐目屋敷ってことは……
八雲 未来
八雲 未来
え、なんで知って……
漣 真央
漣 真央
……ちょっと待ってて、卒業アルバムを持ってくるから
真央はそう言うと席を立ち、本棚のようなものを漁り始めた。

そして、そこから綺麗な分厚い、大きな本…アルバムを持ってきた。
漣 真央
漣 真央
…あった、ここのページ……
真央がそう言って開いて見せてくれたのは、とあるクラスの個人個人の顔が載ったページ。
真央が指さした先には、”漣 真央”と書かれた場所が。
…しかし、その姿は、髪が今より短いだけで、他は今と全く一緒の姿だった。
漣 真央
漣 真央
…これは、2023年の…”僕”が卒業した時の卒業アルバムね
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
…はッッ?!2023年?!
…2023年?それってつまり、100年以上前のことじゃないか。と、5人全員が思っていた。
漣 真央
漣 真央
あの人たちのところに行ったなら、あの人たちが2021年に生徒だったってことも、知ってるよね
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
…まぁ、はい
それが何か……
漣 真央
漣 真央
僕、あの人たちに依頼したことあるの
…霊、のことについて
来栖 梓
来栖 梓
……えっ、それって…
漣 真央
漣 真央
それで気に入られて、不老不死にされた……って感じかな
5人は絶句した。
不老不死?そんなのおとぎ話の世界での話だろう。現実で有り得るわけが無い、と。
だが、真央の顔はとても真剣で……
嘘などついていないように、見える。
それに、100年以上前の人がこうして若いまま生きているわけもない。
氷音達は、信じざるを得なかった。
漣 真央
漣 真央
なってしまったものは仕方ないし、特に支障がある訳でもないから、かれこれ100年くらいずっとこうして過ごしてる
お茶を一口飲んで、真央はそう言った。
氷音達が気になるのは…いや、もちろん今の話も気になるのだが、もしくはそれはそこまで問題ではない。

問題なのは───真央の、反応だった。
「……天希は、狐目屋敷にいるんです」

「……え…”あの人たち”の所に?」

天希が狐目屋敷にいると知った時、真央は、安堵したような、不思議な笑みを浮かべていたのだ。
それが、氷音達にとっての疑問で、問題だった。
普通、知り合いとはいえ、自分の息子が誘拐されたら、殴り込みに行くくらいはするはず。でも、真央にはそんな素振りは見られない。

むしろ安堵した表情を浮かべていることが、納得いかない。
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……なんで、笑ってたんですか?
漣 真央
漣 真央
…ん?どういうこと?
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……天希が狐目屋敷にいるって言った時、ちょっと笑ってましたよね
漣 真央
漣 真央
……あぁ…
真央は、「無意識だった」とでも言うかのような顔をしていた。
漣 真央
漣 真央
…気にしないで。それと、もう関わらなくていいよ、狐目屋敷には
彼方 時雨
彼方 時雨
……は?いや、天希を……
漣 真央
漣 真央
君たちが諦めて行かなくなれば、あの人たちは飽きていずれ天希を返してくれる。
だから、君たちは関わらなくていいの
そう言う真央は、来た時と同じで、冷たい目で氷音達を見つめていた。

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