次の日、氷音は自分のメイドの違和感を時雨たちに話した。
「そんな人いるわけが無いだろ」と思いながら考えていると、奏珠が「あ?!」と大声を出した。
氷音がそう言うと、全員が「まさか、」という顔をした。
氷音のその一言で、5人は天希の家に行くことになった。
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ピンポーン……
と、5人が話をしていると、インターホンから声が聞こえてきた。
「……はい」
「…そうですけど…」
「…ちょっと、お待ちください」
そう言葉を最後に音が聞こえなくなったインターホン。
一軒家の家の前に5人がずっとたむろしているのもあまりいいものでは無い。早く出てきてくれると助かるのだが……と、氷音が思っていると、ガチャ、と家のドアが開かれた。
……高校生のような、女性が家から出てきた。
身長も顔立ちも、氷音達と同じくらい若い女性。
氷音の言葉に食い気味でそう言う女性。
その目はとても冷たく、まるで死んでいるかのような目だった。
女性はそう言って、氷音達を家に招き入れた。
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家に氷音達を招き入れた女性は、氷音達のために飲み物を出してくれた。
ぺこり、と頭を下げてそう言う真央。
氷音達も自己紹介をしようとしたが、「天希から聞いてますので」と言われてしまった。
氷音がそう言うと、真央は少し怪訝そうな顔をした。
「え?」というような顔で真央を見た5人。真央は、「しまった」という顔をしていた。
真央はそう言うと席を立ち、本棚のようなものを漁り始めた。
そして、そこから綺麗な分厚い、大きな本…アルバムを持ってきた。
真央がそう言って開いて見せてくれたのは、とあるクラスの個人個人の顔が載ったページ。
真央が指さした先には、”漣 真央”と書かれた場所が。
…しかし、その姿は、髪が今より短いだけで、他は今と全く一緒の姿だった。
…2023年?それってつまり、100年以上前のことじゃないか。と、5人全員が思っていた。
5人は絶句した。
不老不死?そんなのおとぎ話の世界での話だろう。現実で有り得るわけが無い、と。
だが、真央の顔はとても真剣で……
嘘などついていないように、見える。
それに、100年以上前の人がこうして若いまま生きているわけもない。
氷音達は、信じざるを得なかった。
お茶を一口飲んで、真央はそう言った。
氷音達が気になるのは…いや、もちろん今の話も気になるのだが、もしくはそれはそこまで問題ではない。
問題なのは───真央の、反応だった。
「……天希は、狐目屋敷にいるんです」
「……え…”あの人たち”の所に?」
天希が狐目屋敷にいると知った時、真央は、安堵したような、不思議な笑みを浮かべていたのだ。
それが、氷音達にとっての疑問で、問題だった。
普通、知り合いとはいえ、自分の息子が誘拐されたら、殴り込みに行くくらいはするはず。でも、真央にはそんな素振りは見られない。
むしろ安堵した表情を浮かべていることが、納得いかない。
真央は、「無意識だった」とでも言うかのような顔をしていた。
そう言う真央は、来た時と同じで、冷たい目で氷音達を見つめていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。