第11話

彼らの情報
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2021/08/24 18:20
茅根 綴
茅根 綴
どなたのお話から聞きたいですか?
璃那さん、侑乃さん、白夜さん、華風さん、アラさん、芽衣さん…どなたからでもお話しできますよ
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……じゃあ、璃那…から、お願いします
茅根 綴
茅根 綴
璃那さんですね…
とりあえず璃那さんの情報をお話しましょう
そういうと綴は、「そこの椅子にお座り下さい」と言ってにこにことした。
茅根 綴
茅根 綴
彼女の出身地はこの町、蓬生町。貴方と同じく、黄蘗家の出身です。
身長は163cm、誕生日は12月1日、今現在は17歳です。
生みの親を6歳の時に殺害し、それ以来、生みの親の弟夫婦…義理の両親に育てられていました。

彼女は小さい時から両親に"御札使い"として育てられ、今でもその力を有しています。
…その辺の御札使いじゃ、勝てない程に強い力を。
普通の人なら、本気を出されたらまず勝てないでしょうね。
綴はそう言い、氷音達にお茶を出した。ティーカップに入った、美味しそうなお茶。それを啜って、未来は疑問を口にした。
八雲 未来
八雲 未来
…殺したとかだと、結構有名になったんじゃないの?
茅根 綴
茅根 綴
いえ。黄蘗家が総力を上げれば、それを隠すなんて簡単なこと。ほとんどの人は、そんなことが起こったこと、知りませんよ
八雲 未来
八雲 未来
隠したの?信じらんない…
茅根 綴
茅根 綴
…まぁ、そうですね。しかし、それはあなたがたが彼女のことをよく思っていないから、そういう反応になってしまうんでしょう?
氷音達は、「は?」というような反応をした。
茅根 綴
茅根 綴
彼女は6歳の時、実の両親に捨てられたのですよ。だから殺したのです。「金は払う、買ってくれればあとはどうしてもいい」、と言う両親の声を聞いてしまったから、殺した。

僕は、捨てようとしたその親が悪いと思ってしまうのですが…あなた方は彼女が悪いと思いますか?
綴はそう言うと、上品にお茶を啜った。質問はしているが、返事を気にしている様子はなかった。
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……俺はあいつが悪いと思う
どんな理由でも人殺しなんて……
茅根 綴
茅根 綴
そうですか、まぁ、僕はそんなことどうでもいいですけど
茅根 綴
茅根 綴
あ、そういえば璃那さんは、侑乃さんと幼馴染だとか。
白夜さんとお付き合いしているそうです
自分のメイドや友人を不老不死にしたそうですよ
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
…メイドを?
茅根 綴
茅根 綴
えぇ。そのメイドの名前は、アリス・ロン・リーフィーカ。…たしか、あなたの専属のメイドでしょう?
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……ッッえ、なんでそれを…
茅根 綴
茅根 綴
僕は情報屋ですから。
綴は当然のようにそう言うが、他人に自分のことが知られているのは……はっきり言って気持ち悪いことだ。そりゃあ、なんでそれを、という反応をしてしまう。
茅根 綴
茅根 綴
…彼女が高校生だった頃の話をしましょうか。
幼馴染の侑乃さんを巻き込んで「都市伝説調査クラブ」を設立。部長として依頼をこなし、後に5人の部員をまとめあげ、そして、現在の狐目屋敷の家主……それが黄蘗 璃那さんですね
他にも情報はありますが、あなたがたにはここまでしかお話できません
「次はどなたの話を聞きたいですか?」と聞く綴。
氷音は、「芽衣」の話を聞きたいと答えた。
茅根 綴
茅根 綴
芽衣さんですね
芽衣さんも璃那さんと同じく、黄蘗家の出身です。しかし、璃那さんとは違い、彼女は生みの親に育てられています。
身長は183cm、誕生日は12月4日、今現在は15歳です。

かつては霊感があるだけでしたが、璃那さんの御札の力によって、「目が合った人間の心を読む」能力を手に入れたそうです。狐目屋敷にいる、目が合った人間の思考という限定的なものですが、とても強い能力ですね。
代わりに喜怒哀楽の”楽”を失ったそうです
来栖 梓
来栖 梓
…は?!感情を?!
茅根 綴
茅根 綴
はい、そのようです
「楽しいと感じたことはここ100年ほどない」と本人が仰ってました
感情を奪うなんて、できるわけが無いと思う氷音たちだが、あの女…璃那ならやりかねない、というのも本心だった。
茅根 綴
茅根 綴
彼女は幼い頃から体が弱かったそうですが、姉である璃那さんと遊んでいるうちに体は丈夫になり、今でも元気です。
いつからか、両親に完璧を求められるようになり、勉強でも常に成績トップを強いられていたそうです。

そして、彼女は自分が璃那さんと血が繋がっていないことを知っています。だから、もう璃那さんのことを「お姉ちゃん」とは呼ばない、と言っていました
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……お姉ちゃん…
茅根 綴
茅根 綴
彼女は高校生になって、璃那さんが部長を務める都市伝説調査クラブに入り、部員として活動していました。そして今現在、狐目屋敷の住民として、狐目屋敷の”平和”を守っています。
璃那さん同様、芽衣さんの情報もここまでしかお話できません
芽衣の情報まで聞いて、時雨と未来は思った。

「…その情報、そこまで有力なものなのか?」と。

誕生日やら身長やら出身やら能力を持ってるやら…いくつか知らない情報を貰ったが、そこまで重要な情報ではない気もする。

……重要な情報を、教えるつもりがない、のか?
彼方 時雨
彼方 時雨
……なぁ、氷音
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……ん?何?
彼方 時雨
彼方 時雨
……もう、聞くのやめよう
結局そんないい情報は、教えて貰えない
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
え、は?
八雲 未来
八雲 未来
……ですよね?重要な情報は、話すつもり、ないんでしょ?
未来がそう聞き、時雨と未来が綴を睨みつけると、綴は困ったような顔をした。
茅根 綴
茅根 綴
嫌だなぁ、言いがかりやめてくださいよ
僕が話さない理由は、”君たちに払えるだけの対価がない”からですよ
綴はそういった後、理解出来ていない氷音たちを見ながら、冷めた声で言った。
茅根 綴
茅根 綴
別に、いいんですよ?
君たちから無理やり対価を奪い取る方法を、僕は持っていますから。
???
…告。綴、少しお時間、よろしいでしょうか
店の奥から機械のような、女性のような声が聞こえた。
奥から出てきたのは女性。だが、なんだか少し違和感があった。
茅根 綴
茅根 綴
大丈夫ですよ、ちょうど呼ぼうとしてたところです。
……ルシエ。
ルシエ・ヒポクリシー
ルシエ・ヒポクリシー
告。そうですか。
茅根 綴
茅根 綴
彼女はルシエ。ルシエ・ヒポクリシー。
僕が作った、少女の姿をしたAIです。
賢く、美しく、そして強いAI……
それが彼女です
ルシエ・ヒポクリシー
ルシエ・ヒポクリシー
否。美しくはありません。
少し話し方に癖はあるが、会話が成立しているその少女を見て、氷音たちは絶句していた。
機械なのに、流暢に喋れている。
機械なのに、人のように動いている。

でも、機械だからか、無表情で。
どう見ても機械なのに、機械じゃない。
どう見ても機械じゃないのに、機械。
氷音たちは、少しの恐怖を感じていた。
茅根 綴
茅根 綴
……この子が、君たちにもっと重要な情報を教えた場合、無理やり対価を奪い取る”方法”です
ルシエ・ヒポクリシー
ルシエ・ヒポクリシー
問。彼らはお客様では?
にこっと笑いながらそう言う綴に、疑問を抱いたのか質問するルシエ。
茅根 綴
茅根 綴
……払わなければならない対価を払わずに情報だけ手に入れようとするのは、おかしいでしょう?
ルシエ・ヒポクリシー
ルシエ・ヒポクリシー
是。その通りですね。
茅根 綴
茅根 綴
……と、言うことですが
「「どう致します?お客様。」」
ルシエと綴のその声は、店の中にこだました。

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