狐目屋敷に行った次の日、学校に行った氷音は、昼休みに図書室に来ていた。
”都市伝説調査クラブ”について、調べてみたかったからだ。
学校の図書室には、歴代の卒業アルバムなどがあると聞いたことがあった。でも、1人で全部のアルバムを見れるとは思っていない氷音は、4人の友人を巻き込んで都市伝説調査クラブについて書かれているアルバムを探すことにした。
2021年と書かれた小さく表紙を見て、そんなに前の日誌なのか……と全員が思いながら表紙を見続けていると、図書室の先生が近付いてきた。
キーンコーン、カーンコーン……
そう言って図書室の先生は、遠回しに授業を休むことを許してくれた。
そう言って図書室の奥に消えていった先生を待っていると、先生は分厚いアルバムのようなものを持って出てきた。
その新聞の切り抜きには大きく、「蓬生町にて誘拐事件?消えた6人の子供たち」という見出しが書かれていた。
先生が指さしたところには、確かに名前が書かれていた。書かれているのは2人だけの名前だった。
「蓬生中央高等学校、3年生、黄蘗 璃那さん(18)、彼方 侑乃さん(17)」と。
思わず氷音はそう叫んだ。それを聞いた図書室の先生は少し驚きつつこう言った。
5人は絶句していた。誘拐された6人の生徒と5人の苗字が一致していることに、衝撃を隠せていなかったのだ。
氷音が途中まで思ったことを言いかけた時、後ろから”何か”が璃那に抱きついた。
その声と、その呼び方。氷音には覚えがあった。
でも、何故、ここに?
椅子に座っている氷音に後ろから抱きつき、耳元でそう囁く璃那。その見た目は、服装などは違えど、顔は間違いなく新聞に写っている顔そのままだった。
にこにことしながら璃那は図書室の先生にそう告げて、再び氷音の方を向いた。
当たり前のようにそう言う璃那に腹が立ったのか、氷音は璃那を思いっきり押しのけた。
璃那はまるで骨しかないかのように軽く、押しのけると簡単に離れ、倒れそうになった。
でも璃那は受身を取ろうともせず、ただ倒れていくだけのように見えた。
倒れそうになった璃那を支え、起き上がらせた侑乃は、璃那がちゃんと立ったのを見て、氷音を睨みつけた。氷のように冷たいその瞳に、氷音は青ざめた。
未来に向かってそう言う璃那を、氷音は睨みつけてこう言った。
璃那が侑乃の名前を呼ぶと、侑乃は氷音に近付き……
思いっきり、腹を殴った。
そう言って璃那と侑乃は「んじゃ、またいつかね〜」と言って窓から出ていった。そして、初めからそこには何もいなかったかのように消え去っていった。
確かにそこにいた記憶はあるが、声すら思い出せない。そんな不思議な感覚に陥っている中、5時限目が終了したチャイムが、静かな図書室に響き渡った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。