第3話

100年前の行方不明者
45
2021/08/05 02:00
狐目屋敷に行った次の日、学校に行った氷音は、昼休みに図書室に来ていた。
”都市伝説調査クラブ”について、調べてみたかったからだ。

学校の図書室には、歴代の卒業アルバムなどがあると聞いたことがあった。でも、1人で全部のアルバムを見れるとは思っていない氷音は、4人の友人を巻き込んで都市伝説調査クラブについて書かれているアルバムを探すことにした。
彼方 時雨
彼方 時雨
…ねぇ。その…都市伝説調査…クラブ?って、ほんとにこの学校にあったものなの?
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
うん…あったはずなんだよ、何年前かはわかんないけど……
来栖 梓
来栖 梓
えぇ?この日誌ってやつに何年とか書かれてたりしてぇ‪w
蓬莱 奏珠
蓬莱 奏珠
そんな簡単に分かったら苦労しないでしょ……
八雲 未来
八雲 未来
…2021年って、書かれてんじゃん
蓬莱 奏珠
蓬莱 奏珠
……ほんとだ。
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
2021って……
5人全員
100年以上前ぇッッッッ?!
図書室の先生
図書室の先生
煩いわよ!!図書室では静かに!!
5人全員
あ、はい……
2021年と書かれた小さく表紙を見て、そんなに前の日誌なのか……と全員が思いながら表紙を見続けていると、図書室の先生が近付いてきた。
図書室の先生
図書室の先生
…都市伝説調査クラブ…久しぶりに聞いたわね、その名前
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
え?知ってるんですか?
図書室の先生
図書室の先生
知ってるも何も……この学校に生徒として入った時に先輩に教えてもらったわ。

都市伝説調査クラブの部室は呪われてるって
八雲 未来
八雲 未来
……呪われてる?
図書室の先生
図書室の先生
そう。都市伝説調査クラブに入ってた6人の生徒が、みーんな一斉に行方不明になっちゃったらしいの。
来栖 梓
来栖 梓
一斉に行方不明に…
図書室の先生
図書室の先生
元々霊を払ったりとか……不思議なクラブだったらしいわよ。その時の新聞の切り抜きとかは、まだあったと思うけど……
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
それ、見せてくださいッッ!!
キーンコーン、カーンコーン……
図書室の先生
図書室の先生
…授業はどうするの?
来栖 梓
来栖 梓
えぇ〜!!
気になる!このままじゃ授業に身が入らないです!
彼方 時雨
彼方 時雨
お願いします、先生。見せてください
図書室の先生
図書室の先生
……ちょっと待ってなさい、持ってくるわ
そう言って図書室の先生は、遠回しに授業を休むことを許してくれた。

そう言って図書室の奥に消えていった先生を待っていると、先生は分厚いアルバムのようなものを持って出てきた。
図書室の先生
図書室の先生
これ。当時の新聞の切り抜きよ。
その新聞の切り抜きには大きく、「蓬生町にて誘拐事件?消えた6人の子供たち」という見出しが書かれていた。
図書室の先生
図書室の先生
ここに、その子たちの名前があるわよ
先生が指さしたところには、確かに名前が書かれていた。書かれているのは2人だけの名前だった。

「蓬生中央高等学校、3年生、黄蘗 璃那さん(18)、彼方 侑乃さん(17)」と。
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
…え?黄蘗、って…
彼方 時雨
彼方 時雨
……彼方…?それって俺の…
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
それに、璃那と侑乃って、昨日狐目屋敷で会った……!!
思わず氷音はそう叫んだ。それを聞いた図書室の先生は少し驚きつつこう言った。
図書室の先生
図書室の先生
……やっぱりそうよね、黄蘗とか彼方とか…もちろんあなたたち3人も。どこかで見たことがあるような苗字だと思ったの
来栖 梓
来栖 梓
え?僕らも?
八雲 未来
八雲 未来
どういうことや?
図書室の先生
図書室の先生
……ほかの四人の行方不明になった生徒の苗字は、来栖、八雲、蓬莱、黄蘗……あなたたちと同じよ
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
黄蘗が2人いますけど……
図書室の先生
図書室の先生
……姉妹だったのよ。大富豪の娘で、姉妹。
だから誘拐されたんじゃないか、って言われてたんだけど……
5人は絶句していた。誘拐された6人の生徒と5人の苗字が一致していることに、衝撃を隠せていなかったのだ。
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……もしかして俺らって、この行方不明の人達の……
???
そうそう…早く気づけて偉いねぇ、子猫ちゃん…?
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
ひッッ?!
氷音が途中まで思ったことを言いかけた時、後ろから”何か”が璃那に抱きついた。
その声と、その呼び方。氷音には覚えがあった。

でも、何故、ここに?
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
ねぇ……子猫ちゃん?
俺らのこと調べて、何してんの?楽しいことなら俺も混ぜてよぉ♡
椅子に座っている氷音に後ろから抱きつき、耳元でそう囁く璃那。その見た目は、服装などは違えど、顔は間違いなく新聞に写っている顔そのままだった。
彼方 侑乃
彼方 侑乃
リーナ、あんまり脅かしたるなよ
可哀想やろ?
図書室の先生
図書室の先生
え、あ、あなたたち、誰よ……?!
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
そうだなぁ…「100年前の行方不明者」、とかぁ?
にこにことしながら璃那は図書室の先生にそう告げて、再び氷音の方を向いた。
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
この日誌、読んでくれたんやなぁ……
お礼と言っちゃなんやけど、都市伝説調査クラブについて、ちょっと教えてあげよっか?
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……それ、より、天希は……!!
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
あの子猫ちゃんなら、今頃アラの”おもちゃ”にされてんじゃない?
当たり前のようにそう言う璃那に腹が立ったのか、氷音は璃那を思いっきり押しのけた。
璃那はまるで骨しかないかのように軽く、押しのけると簡単に離れ、倒れそうになった。

でも璃那は受身を取ろうともせず、ただ倒れていくだけのように見えた。
彼方 侑乃
彼方 侑乃
……っと、危ない……
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
ん、ありがと、侑乃
倒れそうになった璃那を支え、起き上がらせた侑乃は、璃那がちゃんと立ったのを見て、氷音を睨みつけた。氷のように冷たいその瞳に、氷音は青ざめた。
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
……都市伝説調査クラブの6人はね、”運命を戻す御札使い”によって、不老不死になったんや。
そんで、狐目屋敷に閉じ込められた。
八雲 未来
八雲 未来
狐目屋敷って、昨日氷音が行ったって言ってたとこ?
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
そう。そこでみんな生きてるよ
もちろん、八雲 アラちゃんもね。
八雲 未来
八雲 未来
八雲って……
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
……君のご先祖さまだと思ってよ。直接的にじゃないけど、血は繋がってるんだから
未来に向かってそう言う璃那を、氷音は睨みつけてこう言った。
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
……おい、お前…天希を返せよ…
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
…侑乃。
彼方 侑乃
彼方 侑乃
ん。
璃那が侑乃の名前を呼ぶと、侑乃は氷音に近付き……
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
う"ッッッッ?!?!
図書室の先生
図書室の先生
ひ、氷音君!?
思いっきり、腹を殴った。
黄蘗 氷音
黄蘗 氷音
う"…い、ッッ……
彼方 侑乃
彼方 侑乃
…これで、少しの間口は聞けへんやろ
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
ん。ありがと、侑乃
図書室の先生
図書室の先生
あ、あなた達、こんなことをして許されると思ってるの……?!
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
うん、思っとるよ?
図書室の先生
図書室の先生
はぁ……?!
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
許されるよ、だって俺らはもう”死んでる”と思われてるんだから。
誰も君たちが「黄蘗 璃那に襲われた」って言っても信じない。だってその人間はもう100年前に死んでるはずなんだから
来栖 梓
来栖 梓
……ほんっと、性格歪んでんじゃないの…
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
それ、白夜にも言ってることになるんやが……まぁいっか。
そう言って璃那と侑乃は「んじゃ、またいつかね〜」と言って窓から出ていった。そして、初めからそこには何もいなかったかのように消え去っていった。
確かにそこにいた記憶はあるが、声すら思い出せない。そんな不思議な感覚に陥っている中、5時限目が終了したチャイムが、静かな図書室に響き渡った。

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