第290話

『 black swan 』(2)
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2020/02/14 23:58


僕に訪れた最初の 死 は、此処という場所を離れた時だった。




正直怖かった。



この場所から離れた瞬間、すべての功績が崩れていくのではないのかと。




怖くて怖くて仕方がなかった。




当然、そこで知り合ったものとの連絡だって途切れてしまうわけであって




寂しかったのかもしれない。




〘 君は何が好きなの? 〙




〘 君の好きなようにしてみなよ 〙





これが初めてあった者と話した会話であった。





初めて自分の何かに、自分の色を合わせてみた瞬間だった。





その瞬間、今まで未完成のまま、真っ白のままであった自分のキャンパスが自分の色で埋まった。





それからは簡単だった。






自分のやりたいように、自分の思うままに動き始めた。






そして、そうして数年が経った時ふと気づいた。





自分の前には何も無くなっていた。





こんな瞬間、初めてだった。





今までは、良くて2番目 が自分にあった位置だと思っていた。


なんなら、自分が1番下でなければ、下に1人いれば、、そんな感覚の人間だった。


決して 1番 を望むような、そんな子じゃなかった。


でも、その瞬間が来てしまった。


そう、僕の前には誰一人として人が居なかった。


これが僕の1番記憶に残っている 瞬間 であった。


僕の周りの友達は、そんな僕を軽蔑することも無く お互い頑張ろう と言って親交を深めてくれた。















ある日言われた。



〘 もう心臓が脈を打たないんだよ 〙



それは、初めて 自分の色 に対して言われた マイナスな言葉 だった。



もう動かないんだってさ、僕の色を見た瞬間に。




その言葉はもう、僕を止めようとしていた。




そして、時は止まったらしい。




また僕は白黒の世界で、正解も知らないまま、翼を1枚も纏わない可哀想な白鳥はそこを意識が朦朧としたまま歩き始めた。




まるで世界が壊れたあとの世界を見たようだった。





僕の色に何も感じなくなった人間はすぐに、何かに取り憑かれたかのように沈んで 沈んで………


そしていつかは、僕を忘れていった。







なら、僕の 死 というのはもうそこまで来ていた。





いや、来たのだった ______








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