第260話

『 からくりピエロ 』 JK.
255
2019/09/13 15:26

今、私がいるこの駅は まるで私だけの世界のように狭く感じる。


実際の所は、人が多く私の目の前を通り抜けているけれど


私の場合は違うよ。


私はある1人の人を待っているんだ。


待つこと数時間、約束の時間はもうとっくに過ぎてるのにさ、おかしいよね。


こんなことされた私が馬鹿みたいにそんな彼のことを愛していることも。


自分があの人にとって、とても気安い道化師のように思われていることをしってても尚好きでいることも。



これじゃ私がまるで ピエロ のように ___ .



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私と彼の出会いは今年の春であった。


4月__


ソメイヨシノの花びらが私の顔を通り抜ける。



そこに出迎えている高校はとても美しい姿で私の目は捉え、これからの高校生活への期待が寄せられていそうだ。



そんな中、ある1人の人が私の目に映りこんだ。



そう、それが今も私が思いを寄せている先輩である じょんぐく先輩 であった。



とても目が綺麗で、まるで水晶玉のように太陽の光で輝いていて



肌の白さがまた可愛い色をした、コーラルがかった唇を引き立たせていた。




そんな彼は私と目が合うとゆっくりと微笑んだ。




その瞬間はまるで、いつかの日にみた小説にそっくりであった。




自分が恋愛という2文字に疎いせいなのか、すぐにその笑顔に私は惹かれて、部活も先輩の所属する部活のマネージャーへとなった。




そうした中、入学して早数ヶ月が経ち部活の人達やクラスメイトともだんだんと打ち解けられるようになった時




🐰「まだ帰んねぇの?」



と、先輩がボールを転がしながら私に近づいてきた。




そう、その日は部活のことで色々と準備があり、それが長引いたせいでそう早くは帰れそうにもなかったのだ。




『まぁ、、笑』




と、好きな人相手にすごく短く返す私。




今思えば、もっと色んな返し方があったであろう。




先輩は私の返事を聞くと、しぶしぶ私の隣に座り




🐰「んじゃ、俺も手伝う。」




なんて言って、私がやっていた作業を見よう見まねで真似してきた。




『これは私の仕事なのに……先輩にやらせる訳にはいかないですよ』




といい、何とか言い聞かせようとしたが何を言っても意志をかえなかったため私は諦めて作業方法を教えて手伝って貰うことにした。




その帰り、私は何故か先輩に




『好きなんです、先輩が』




なんて言葉を残した。




何言ってるんだろう。





そう思ったのは、帰ってからで急いで先輩のLINEに「さっきの言葉、気にしないでください。」と送ったはずなのになんだか腑に落ちなくて





最終的に終わってもいい、そう思い「もし告白の返事がYESの場合は明日の11:00に駅に来てください。」と送った。






そして今日に至るんだ。






________________



今日も何も知らない顔して世界は回っている。



そういえば噂で聞いたことがあった。



「 ねぇ、やっぱり じょんぐく先輩、去年の3年の先輩に彼女がいるみたいだよ 」って。



ほらね、やっぱりそうだった。



今の時間は夕方、もう数時間も経っている。そう、待ち合わせ時間なんてとっくに過ぎているのだ。



そう これが私の悲しい末路なんだね。



何かを期待してここで待っていた自分に笑えてきた。



さぁ帰ろう、そう思い重いカバンを持ち上げた瞬間



ピロンと音が鳴った。



それはLINEの通知音だった。



誰だろうと思い確かめてみると



『先輩………』


そこには「返事、、あと少しだけ待ってください」とあった。



『っ……』



なにそれ……



下唇をぎゅっと噛んだ。



息が止まりそうなぐらい涙が溢れて言葉が出ない。



そのままそこで泣き止むまで蹲るような体勢でいた。



_______________




それからどのぐれいの時が経っただろう。



先輩は今日も来ないんだ。



あの返事をLINEでくれたあの日、先輩は事故にあった。



そして、先輩はまもなくこの世の人間では無くなってしまった。



本当に先輩はずるいんだ。



ねぇ、今日も何事もないように世界は回ってるんだ。



これできっと貴方の思うままの ピエロ みたいな私。



先輩はやっぱり私になんの返事もくれないんだ。



今日だって、そして明日だって先輩はここに来ることはもうない。




『……帰ろうか』



そう言って動き出した足。



私は誰かに手を止められ足を止める。
























🦁「君、いつもここにいるよね?誰か待ってたりする?」



そう言って首をこくんと傾げるお兄さん。



『お兄さんは…誰か待ってるんですか?』



私はそう聞いてみると



🦁「うん、待ってたんだ。」



と、過去形の言葉が帰ってくる。



『……じゃあ、待ってた人が来たんですね。おめでとうございます、それじゃあさようなら』




そう冷たく言い放ってみると、今度はもっと力強く手を握る。




🦁「違うよ。僕が待ってたのは君。覚えてない?僕、じょんぐがと同じ部活の!!」




『……てひょん先輩?』





🦁「そう!!」




🦁「ぼくが待ってたのはあの日からずっと君だけだよ。」



あの日……それで頭をよぎったのは私にとって思い出がその日で止まっていた あの日 だ。













🦁「あなたちゃん、みーっけ」



そう言って自分の手を私の頬に当ててくる先輩。



私は目から暖かいものが流れているのを知った。



そして



てひょん先輩はそんな私を見て微笑んだ。



___________




👩「あなた〜、久しぶり!!」



そう言って手を振るのはいつぶりか忘れてしまうほど久しぶりな高校時代の親友。



『久しぶり!!』



今日は同窓会で、顔なじみのクラスメイトがたくさんいた。



👩「あれ?あんた、ちょっとお腹おっきくなった?」



『あ、バレた?笑』



👩「え、、まさか」



『ふふっ笑 秘密〜笑』



👩「へぇ!!あんたが結婚ねぇ……」



なんて微笑む親友。



👩「でも、あの人は嫉妬が酷そうね笑」



そう言って笑うと




👩「まさかあんたが あの人とくっつくなんて笑」



と、言った。



👩「あんなに じょんぐく先輩らぶ だったのに〜笑」




『あはは、、でも、今の方が幸せなのかもしれない。』




何かが壊れそうだとか、自分の考えを変えたら自分も変わってしまいそうで怖くてそういうことを一切曲げなかったあの時よりもそう思えるんだ。




『それを教えてくれたのは……』



なんて言いながら自分のお腹を撫でる。



👩「ふふ笑 幸せ……といったところね笑」



『うん、とっても幸せ笑』



👩「んじゃあ、今の調子で言うけど、あんたの旦那さん迎えに来てるよ笑」



『え?』





























🦁「あなたが遅かったから来ちゃった笑」



『て、てひょん!!』



🦁「俺1人で家とか怖すぎて入れないんだけど」



『いつも1人でいるじゃん笑』



🦁「き、今日は特になの!!特に!!」



『笑』



『わかったから笑』



🦁「………本当は、、その、、嫉妬というかなんというか……」



『うん、知ってたよ笑』



🦁「あー!!もう!!帰る!!帰るから!!」



なんて拗ねてるのは私の旦那さんであって


私はきっと 道化師 から 人間 になれたんだろう。


そう思ったら、今までのことだって全部 全部思い出である。



🦁「あ!そうだ!あなた、今日はちゃんと寝室で寝るんだからね?!リビングは絶対だめ!!」



なんて、少しだけお母さんのような事をいう彼のことを今は愛しているのだから__


END.


原曲「 からくりピエロ 」



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