「 やぁ、ちょうど君と出会う前は上手くやっていたんだ。
確かに酒を飲みすぎることは問題だったけど、別にいいでしょ?笑 」
そんな口説き文句、俺はいったいどこで覚えたんだろうか。
なにか他のものに影響された訳でもなくて、自分がよく聴く曲にも、たまたま開いた曲にもそんな歌詞はないのに
何故かふいに君と出会った時に口から放たれた言葉。
今、その発言を振り返り4年後の俺は言う。
🐭「なかなか痛い言葉だな笑」
なぁ、君は最近俺とあった。
聞けば、友達に 会えて嬉しかった だなんて言ってたみたいだ。
でも、願わくば俺は二度とゴメンだね。
俺は分かってるよ。君は傷ついて壊れかけの車でこの街を出ていったことだって
そして、今、4年も連絡のなかった君が ホテルのバー で綺麗に怪しく光見えるんだ。
それは、俺を大きく飲み込むように誘う。
これだから 俺はダメなんだ。
だから近くまで引き寄せてくれよ。
もっと もっと 浸って溺れるみたいに。
こうして俺は後部座席へと移動する。
俺は知ってる。
金に余裕が無いってことぐらい。
君の肩にある蝶のタトゥーに口付けでもすりゃ、君が盗んできたマットレスの角からシートを引き出してみれば
あれは元々ボルダーにいた頃のルームメイトの奴だっけ
俺達は全く歳を取らないな
またあの頃の俺らが戻るように
いや、もしかしたらお互いが望んでいたのかもしれない。
🐭「ははッ笑 お前、全く変わんねぇじゃん」
なんて怪しく笑えばもうそこに 4年後 の俺なんていう古臭い肩書きは無くなった。
『私達、全く変わらないわね。』
なんてお前は言う。
そうだよ、俺達は全く変わらない。
そう確かめあった次の日の朝。
まだ寝ている俺にお前はこう呟く。
『ねぇ、私あの時なんで去っていったんだろうね……忘れちゃったわ笑』
『おかしいよね……』
『自分の事なんて、自分が1番分かってるはずなのに……』
『ねぇ、ここにいてよ。』
そう言い、前髪にそっと触れるお前の少しだけ暖かい手先。
そういえば、お前も 音楽 関係の仕事をしていたんだっけ。
あの、一昔前ぐらいに一緒に耳が受け付けなくなるほど弾いた Blinkー182 の曲。
ツーソンの街で死ぬほど弾いたあの曲。
きっと今弾けと言われても体が覚えているはずだ。
少し過去の夢を見るように過ぎるお前との話。
そして、そんなお前は俺になんて構わずにまた呟くんだ。
『分かってるよ。君があの後傷ついてたことだって、私が貴方を傷つけた事だって。』
『でも昨日、そんなあなたがホテルのバーにいた。横顔が綺麗に私のグラスに反射していたの』
『やっぱり私達は……』
🐭「全く変わらない、だろ?笑」
俺は触られていた手先を一旦止めるように言う。
『!!』
『起きてたんだ』
🐭「とっくに笑」
『そういう所も変わらないね笑』
🐭「なぁ」
そして、あの日からちょうど 4年後 のなんにも変わらない俺は言うんだ。
🐭「関係だって、全く変わらねぇだろ?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。