第121話

” また君と ___ ” all.
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2019/02/05 13:28



” あいつ ” というのは俺達がデビューしてすぐに入ってきた マネージャー。



そいつは半年で辞めちゃったけれど、俺たちとデビューからの時間を共に過してくれた大切な人。




その頃の俺達はまだ幼くて、あいつがやめた時にはみんなが 「どうして」 って。




でも、それから知ったそいつの 死。



あいつ、ひとりで病気と闘って ひとりで苦しんで



俺達にはそんな弱いところ一つも見せやしなかった。



その事実を知った時、メンバーみんなで泣いた。



初めて賞をとった時より、初めてデビューが決まった時よりも 泣いた。



ここで少しだけ、 あなたの話をしよう。



あなたは今生きていたなら ほそくと同じ歳。



初めて事務所に挨拶に来た あなたはまだまだ幼くて



みんな言ってた。



「この子がこんなハードなものをこなせるのか」って。



でも、あなたはみんなの常識を破るようにあんなに小さな体で全ての仕事をこなしていた。



たまに、あなたが調子悪そうにしている時 自分が練習で遅れていることよりも心配になっていた あいつ という存在は




触れたらすぐに溶けてしまうような 雪 みたいで



そんな繊細な笑顔に僕達は次第に心打たれていった。




密かに 好き だったのかもしれない。



けれど、僕達にはそんな時間などなくて 僕らはその気持ちをいつかの風に飛ばした。



いつの日からかはもうすっかり時が経っているから定かではないが



たしか僕達がデビューして半年の月が経った頃



あなたがぴたっと 事務所に来なくなった。




みんなはきっと明日には 明日には来るだろうと




そう願う日がずっと続いた。




でも あいつ が来ることは決してなかった。




そして、そのまま時が経って 僕達は気づけば高い地位のグループへと上がっていった。




呼ばれるのは すべて 僕達の名前で




いつかの日には 「恥ずかしい名前」 だったのが 「 誇り高い名前 」 となっていった。




そして 僕達も安定して活動できるようになったその年。




僕は事務所でこんなものを見つけた。




🐨「……………」




それは 紛れもなく事実だった。




そう、その物には あなたの死が確定 した内容が書かれていた。




僕は黙ってそれをメンバーに見せた。




メンバーはしばらく黙ったままだった きっと今考えるとその時に話をしていたら涙が止まらないことをみんな知っていたから。





第三者からの重圧やアンチという名の僕達の傷。





君とならどんなことでも 笑い合えると思っていたから。





まるで 僕達はひとりでこの道の果てにいるような気がしてならなかった。





それは、あなたのことがみんな大事だったから。




あなたのいる場所は俺たちよりもはるか遠くにあって、飛びたくても飛べない位置にあるから。




その日の僕達は 夜の静けさにそっと涙を隠した 。









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