光の家を飛び出して
夜道を1人で歩く
とりあえず、慧に返事しなきゃ
こういう時ってなんて返事したらいいんだろ...
もどかしい、ええい、!
電話しちゃえ
プルルルプルルル
妙にコールが長く感じる
しばらくたって、コールがプチッと切れる
電話越しに、私の大好きな声が聞こえる
私の様子を伺うような慧の声
その時だった、私の右肩を誰かがガチりと掴んだ
後ろを振り向くと、柄の悪そうな男の人、2人組が
ニコニコ、いや、ニタニタ笑いながらこっちを見てた
やばい、これはまずいぞ、
男二人は早くも勝ち誇った顔だった
私の肩を掴んだ手は、腕を伝って、手首をがっちり掴んできた
だめだ、逃げられない強すぎる力が
やだ、怖い、
慧、慧助けて、
ガクガクと足が震える
やっぱり光の家にいればよかった、
一人の人がそう言うともう一人の人が
私にグーパンを向けてきた
やばい、殴られる
振り上げられた腕はスローモーションのように私の顔面向かって降ってくる
え、?
私の目の前には慧が立ちはだかっていた
きっと、私の代わりに顔面くらってるはず
ふだん、おっとりな慧の聞いたことない低い声に
男二人組は、走って逃げた
座り込んでしまった慧に駆け寄る
その頬は痛々しく赤く晴れ上がっていた
慧、、
自分が怪我してるって言うのに私の心配なんか..
夜の道路、そんなのお構い無しに
慧は、私に抱きつく
ドラマによくありそうなキザなそのセリフにちょっと泣きそうになる
仲直りの代わりに
繋がれた手にぎゅっと力を込めた。
今日は災難だったね
でも、これも貴重な経験かな?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。